後方押出しは,中空ステムの先端に取付けられたダイスに向かって,コンテナとビレットとを一体として押しつけ,ビレットをダイスを通して中空ステム内へ流出させる機構に基づく押出加工法である.このため,コンテナ内壁とビレットとの間には相対滑りとそれに伴う摩擦がなく,ダイス近傍の被加工材のみがダイス出口に向かって絶えず連続的に移動し,残りの部分は非変形状態にとどまっている.したがって,後方押出しでは,メタルフローが均一であり,押出荷重も一定で低く,押出時の焼付きや割れが少なく,製品品質が安定しやすい.しかし,後方押出しでは,ビレット表皮層が押出製品表層に流出する傾向が強いこと,コンテナとビレットとの間に介在する空気や異物が押出製品表面に欠陥を生じさせる可能性があること,などが指摘されており,問題となる場合がある.これらを防止する方法として,押出前のビレットの外皮除去が不可欠であり,そのほか,ビレットのテーパ加熱やコンテナ内壁の入念なクリーニング(かす取り)も必要となる.また,後方押出しでは押出材が中空ステムの中を通って押出されるために,押出材の最大外接円はステムの内径と強度によって制限を受け,前方押出しに比べて大きな断面形材の押出しが困難であるなどの欠点もある.