面心立方晶(fcc)構造のγ鉄に炭素や合金元素が固溶した相の名称.純鉄では,室温ではα鉄(bcc)であるが,A3点(911℃)とA4点(1392℃)の間でγ鉄になる.γ鉄には比較的多量の炭素や合金元素が固溶する.Cは最大約2.1mass%程度が固溶し,C量増加に伴ってA3点が低下しオーステナイト域が拡大する.炭素鋼のオーステナイトは高温でのみ存在する相で,焼入れや焼ならしなどの鋼の熱処理の出発組織(母相)として重要である.しかし,NiやMnなどを多量に添加するとオーステナイトは安定化して室温でも存在するようになる.室温でオーステナイト組織になるように成分元素を調整した鋼をオーステナイト鋼という.