一般には,有限変形をする連続体の力学(非線形連続体力学)をさす.1960年代にアメリカのTruesdell,Noll,Coleman,Eringenらによって基礎が確立され,徳岡が1970年頃有理力学として我が国に紹介した.任意の曲線座標系での,三次元,大変形,速度・履歴依存などの複雑な力学挙動を厳密に定式化する.連続体の挙動を支配する法則には,質量や運動量などの保存則と個々物質の特性を表す構成式がある.単純物質(単純体)とは,物体のすべての点の変形履歴から各点の応力が決定できる決定論の原理,ある点の応力はその点だけの変形履歴に依存する局所作用の原理,記述する座標系に性質が依存しない客観性の原理だけを満たす物質である.この構成式に種々の制約を課していくと,弾性,粘弾性,[弾]塑性,流体,固体,結晶などを表す構成式の一般的な表現とそれらの間の数学的な関係が得られる.このような知見は,多様な力学現象の本質を解明するために重要であるだけでなく,個々の構成式を決定するときにも有効である.すなわち,特定の変形をする材料の構成式を決定する場合にはその一般形を,またその構成式をさらに広い範囲の変形に拡張する場合には種々の構成式の間の関係を知っていることが有用である.有理力学では当初このような構成式の研究が課題であったが,数値計算の発達によって有限変形を伴う複雑な現象の解析にも応用されるようになってきた.