微小変形理論が適用できない大変形のこと.有限変形の場合には,ひずみ,応力,釣合い式,構成式などは,変形前の配置を基準にする(Lagrange表記)が,変形後の配置を基準にする(Euler表記)かによって異なる.変形前の物質点の位置をX,その点の時刻tにおける座標をxで表すと,変形は関数x=x(X,t)で表される.変形こう配F=∂x/∂Xは直交テンソルRと対称正定値テンソルUあるいはVを用いて,F=RU=VRと分解することができる(極分解).ここで,Rは回転,U,Vはそれぞれ右,左のストレッチ・テンソルと呼ばれる.極分解は,任意の有限変形が互いに直交する三方向の伸縮と回転,あるいはその逆で表されることを示す.GreenのひずみテンソルはE=(FTF-I)/2で,またAlmansiのひずみテンソルはA=(I-F-TF-1)/2で定義される.Cauchy応力をTで表すと,応力の釣合い式はEuler表記では\(\rho \boldsymbol{\dot v} = {\rm{div}}\boldsymbol{T} + \rho \boldsymbol{f}\)と表される.ここで,divは空間座標に関する発散,vは粒子速度,\(\boldsymbol{\dot v}\)は加速度,ρは密度,fは物体力である.Lagrange表記では\({\rho _0}\boldsymbol{\dot v} = {\rm{DIV}}\boldsymbol{\pi }_K^T + {\rho _0}\boldsymbol{f}\)と表され,ρ0は変形前の密度,\({\pi _K} = \det \left( \boldsymbol{F} \right)\boldsymbol{T}{\left( {{F^{ - 1}}} \right)^T}\)は第一Piola-Kirchhoffの応力テンソル,DIVは変形前の座標X関する発散である.弾性体の構成式はT=RG(U)RTという形で表すことができ,釣合い式に代入すると有限弾性論の基礎式が得られる.弾性論だけでなく,粘弾性,塑性などの非弾性理論も有限変形に拡張されている.いずれも変形が小さい場合には微小変形理論に帰着する.