多結晶材料においてその粒径dに対して,粒界が強固で粒内で生じた転位がすべてたい積する場合,その粒界に作用する応力はdの平方根に反比例する.この関係式をホール・ペッチの式といい,微細粒強化に伴う実測強度の粒径依存性の目安に使用されるのに加え,析出強化・分散強化など種々の実用的な強化機構における母材結晶粒の強度評価にも欠かせない基本式となっている.しばしば,前述したメカニズムが成立しない状況においても同式は簡易であるがゆえに多く使用されているのが現状である.さらに近年,ナノ結晶材料に関する研究が盛んになり,その強度-粒径関係として,ホール・ペッチの式が成立する粒径が1μm以上の領域と,逆ホール・ペッチの式が成立する粒径がサブμm以下の領域が存在し,その閾(いき)範囲も材料系により大きく異なることが明らかになりつつある.【逆ホール・ペッチの式】