微小き裂,ボイドのような準微視的な欠陥・空げきの分布によって材料が損傷を受けるとき,その損傷状態を適当な力学的内部状態変数で表現することにより,損傷の発達と損傷材料の力学的挙動を連続体力学の観点から記述しようとする力学分野をいう.損傷状態を表す内部状態変数は,特に損傷変数と呼ばれている.損傷状態がこのような損傷変数で十分正確に表現できるためには,適当な均一化によって損傷材料が連続体近似できることが前提となる.この条件が成り立つとき,損傷力学では分布空げきの発達による損傷・破壊の問題を通常の連続体力学の手順に従って解析する.すなわち,①分布空げきの力学的効果を適当な損傷変数Dで記述する.②これらの損傷変数の発展式を定式化する.③分布空げきによって損傷を受けた材料の構成式を定式化する.④これらの式によって所定の初期値・境界値問題を解く.このうち第一の問題については,スカラ,二階テンソル,あるいはさらに高階の偶数階テンソルD(0≦|D|≦Dcr)が用いられ,通常,D=Oによって未損傷初期状態,|D|=Dcrによって最終的破壊状態を規定する.ここで|D|は,適当に定義したDのノルムであり,Dcrはその臨界値である.一方,第二,第三の問題に対する統一的取扱いとしては,熱力学的構成式理論が適用されることが多い.損傷力学は現在,金属材料,複合材料,コンクリート,岩盤などの弾性損傷,弾塑性損傷,クリープ損傷,疲労損傷などに広く適用されている.【損傷】