工業標準ともいう.社会が進歩して産業が盛んになってくると,社会生活に必要な概念,品物,方法,手続など次第に多様化,複雑化して,より便利になっていくべき社会生活が逆により手数のかかる面倒なものになっていく傾向が生まれる.この傾向を阻止して人々の相互理解を深め,円滑で便利な社会生活を保っていく手段は,社会を流れる概念,品物,方法,手続などをできるだけ少数化,単純化する以外にない.そこで,関係する人々の間の公正な利益または利便をはかるために,社会に存在し,あるいは発生する概念,品物,方法,手続などを意識的・組織的に管理して,これらに関してできるだけ統一化・単純化された取決めを設定することになる.この取決めのうち,工業に関するものを工業規格という.工業規格としては,国際規格(ISO,IECなど),地域規格(CENなど),国家規格(JIS,JAS,ANSIなど),団体規格(JASO,ASTMなど)および社内規格がある.ISOでとりまとめた標準化(工業規格化)の具体的な目的は次のとおりである.①相互理解(用語,記号,製図など),②健康,安全,環境の保護(人および物質の安全),③インタフェース,互換性(システム間の整合),④使用目的への適合性(製品の品質・性能),⑤品種の抑制(製品の単純化),⑥消費者の利益