アメリカ,ヨーロッパ,カナダ,日本,ロシアからなる5極パートナの国際協力プロジェクトとして建設が進められている宇宙ステーションは宇宙環境を利用した生命科学,材料科学・流体物理の実験研究をはじめ人間の宇宙長期滞在に必要な健康管理を含めた医学研究,真空を利用した天体・太陽系の観測,地球観測など多用途に利用できる軌道上の実験・研究施設.各パートナはその能力に応じて宇宙ステーションの要素を提供し,共同して飛行運用を実施することを取決めている.日本は日本モジュール(JEM),ヨーロッパは与圧モジュール,カナダはトラス構造上を移動できるマニピュレータ,ロシアは実験モジュール3個,居住モジュール1個を含むモジュラ型のコンプレックスなどをそれぞれ担当としている.
宇宙ステーションは全体の剛性を保ち多くの要素を取りつけるトラス構造をベースとし,地上(Z軸)に対して水平(Y軸)に位置し,アメリカNASAの実験モジュールの軸方向(X軸)に飛行することとなる.日本モジュールとヨーロッパのモジュールは飛行方向(X軸)に対しては横向きに,かつロシアの要素群は後方となる.
トラス構造の全長は108mある.左右に4枚ある太陽電池パドルは長さが74m,全重量は約4百数十tになる.供給電力は約110kWで,このうち46kWが実験に利用できる.乗組員は2002年までは3人,2002年以降は6人常駐となる.日本の宇宙飛行士もこの中の一人として活躍することになっている.データ伝送はデータ中継衛星を経由して行う.
1998年の中頃から軌道上で組立を開始して2002年には全体が完成する予定となっている.
宇宙ステーションの地球表面に対する姿勢は常に同一なので,地球を1周する間に宇宙ステーションは1回転する局所水平/局所垂直となる.宇宙ステーション本体としての姿勢制御精度は三軸まわりに約5°ぐらいであるから,精密な天体観測や地球観測のためには精度のよい指向制御機構を別途用意しなければならない.
宇宙ステーションの飛行高度は,シャトルによる補給能力と軌道高度維持などの安全面を考慮するため上下する.太陽活動の低い時期は約350km,高い時期には約450kmぐらいの高さを飛行し,約90分で地球を1周する.飛行軌道が赤道となす軌道傾斜角は51.6°になる.
宇宙ステーションの微小重力環境を乱すおもな振動源は太陽電池パドルや熱放射板の回転だが,能動型の振動遮断装置も考えられており,微小重力環境として10-6gぐらいを達成できるものと考えられている.
実験装置を搭載するラックへの供給電圧は直流120Vとなっている.