物体からの放射エネルギーを検出して非接触で物体の温度を測定する装置.黒体の輝度を測定した時に黒体の真の温度を与えるように較正しておき,対象物体の見かけの温度を求め,物体の放射率(ふく射率)により補正して真の温度を求める.ただし,測定経路中に放射性の媒体がある場合にはその透過率も勘案する必要がある.測定範囲は広く,常温以下から2000℃程度まで測定可能であり,また,最近の測定素子は感度が高いため0.1℃以下の温度分解能で測定可能である.一般に物体の放射率を放射温度計が対象とする波長範囲であらかじめ正確に知ることは容易ではないため,放射温度計による測定温度の絶対値は誤差が大きい.しかし,同じ条件で温度の変化をモニタするには適している.測定素子としては全波長を対象とする熱検出型のサーモパイルやボロメータ,赤外域を対象とする半導体のSi,PbS,CdS,InAs,InSb,HgCdTeなどがある.熱型素子の応答速度は数十msから数msで,半導体型素子は数百μsから1μs以下までと早く,また,感度も熱型素子よりも三けた良い.そのため,1点の温度だけでなく,半導体素子を用いて温度分布を二次元的に画像化するサーモグラフィが製品化され,広く使われている.同じ原理を用い,タングステン線を加熱するふく射高温計もあるが,今ではほとんど用いられていない.