単独あるいは複数のNC工作機械に,工作物を格納する工作物ストッカおよびそこと工作機械との間で工作物を自動的に供給または着脱する装置,並びに工具を貯蔵し供給する自動工具交換装置などを備え,長時間無人に近い状態で複数品種を自動的に加工でき,所定の品物の加工をほぼ完了できる装置をいう.FMCは,多種少量生産の自動化に対応でき,しかも中小規模の企業にも導入可能な加工システムとして開発された.
FMCの中核加工機能として用いられるNC工作機械としては,加工対象の品物により適したものが選ばれるが,マシニングセンタとNC旋盤のいずれか,あるいはそれらの組合せであることが多い.FMCにおける柔軟性は,これらNC機の機能に依存している.単独のNC機に比して,FMCの加工機能として用いられるためには,荷酷な使用に耐えられるヘビーデューティの機械であること,切くずやクーラントの処理性が良いこと,多様な工具や取付具を用いることができること,などが求められる.
工作物の形状を大きく角物と丸物に分けると,角物では加工機械としてマシニングセンタを用い,工作物をパレットに取付けることが多い.パレットをストックする機能と搬送機能を兼ねて,パレットプール形式とするのが一般的である.工具については,マシニングセンタが本来備えている自動工具交換機能および工具マガジンで通常は対応できるが,より柔軟性を高めるためには,工具マガジンの貯蔵可能本数を増加させたり,共通的な工具ストッカから必要な工具を自動的に供給することも行われる.
丸物の場合は,ループ方式の工作物ストッカから取出して工作機械であるNC旋盤のチャックに直接くわえさせるためにロボットあるいはローダを用いるのが一般的である.NC旋盤の工具は,12本程度まではタレット式刃物台に装着されるが,より多くの工具を使うためには,マシニングセンタと同様に自動工具交換装置を備えたものもある.
一台の工作機械に,簡単な搬送機能を追加したFMCの場合には,工作機械の制御機能が全体を制御することが可能であるが,工作機械を複数台使用したり,各周辺機能が複雑になったときには,全体を制御するためのセルコントローラを使用する.多種の工作物や工具を識別し,それに応じた加工用データを適用するためにIDセンサが用いられることもある.
図は,複数台の横形マシニングセンタとパレットストッカをパレットローダと称する搬送台車で連結したFMCである.全体の運用をつかさどるソフトウェアが極めて簡単であり,より小さい構成で,いったん設置した後でも,機械やストッカを増設し,拡張することが簡便に行える.