接触する二物体が相対運動しようとするとき,あるいは運動しているときの抵抗.前者は静摩擦,後者は動摩擦と呼ばれる.また摩擦は,運動形態から滑り摩擦と転がり摩擦,潤滑剤の有無で潤滑摩擦と乾燥摩擦に区別される.さらに潤滑摩擦は油膜の厚さと表面粗さに依存して流体潤滑,弾性流体潤滑またはEHL,混合潤滑,境界潤滑に分類される.潤滑剤の粘性や粘弾性に起因する摩擦を粘性摩擦と呼ぶことがある.乾燥滑り摩擦の機構としては①真実接触面の凝着部をせん断するせん断成分,②硬い突起が軟らかい面に溝を形成する掘起こし成分,③エラストマなどに顕著な弾性ヒステリシス損失成分がある.せん断成分の摩擦力FはF=Aτで与えられる.ここでAはせん断を受ける真実接触面積,τは接触面でのせん断抵抗である.接触する高い突起が塑性接触するとき真実接触面積は垂直荷重をP,一対の物体のうち軟らかい材料の硬さをHとすると,A=P/Hで与えられる.したがって摩擦係数μはμ=τ/Hとなる.また真空中での高い摩擦係数は,ジャンクショングロースと呼ばれる接触点での大きな塑性変形により,摩擦せん断面積が大きくなることに起因する.掘起こし成分は硬い突起の幾何学的形状で決まる.金属材料では①項と②項が支配的である.乾燥摩擦ではクーロンの摩擦法則がなり立つ.