凝着摩耗

adhesive wear

 基本的な摩耗機構の一つ.二物体が接触するとき高い突起どうしで接触し,真実接触点を形成する.せん断力が作用して滑りを生じるときにその接触点は破壊する.せん断部分が元の接触面の場合には摩耗は生じないが,それ以外の場合には摩耗したことになる.その結果相手面に付着した状態を移着という.この移着粒子がその面からとれたときに摩耗粒子となる.凝着とは二物体が接近して互いの原子が相互作用を及ぼしあう状態をいう.凝着摩耗の大きさはその凝着強さによる.これは材料の結晶構造,相互溶解度などに依存する.酸化膜のない新生面での凝着は大きい.ともがねと呼ばれる同じ金属どうしの凝着は大きくなり,摩耗が著しく大きくなるので乾燥摩擦ではそれを避ける必要がある.また真空中では金属表面の酸化物が補修されないので,凝着は強く,表面損傷は激しくなるが,はく離粒子は移着・再移着を繰返すので摩耗は小さい.HolmやArchardの凝着摩耗理論では摩耗量VVkPL/Hで与えられる.ここでPは荷重,Lは滑り距離,Hは硬さである.比例定数kは摩耗係数と呼ばれ,真実接触点が相手面との接触を繰返したときに,ある体積を有する摩耗粒子を形成する確率と解釈される.kの値は摩擦材料や摩擦条件,環境などの摩擦系に依存する.