圧力境界条件

pressure boundary conditions

 流体潤滑状態で作動する軸受やシールの潤滑膜内に発生する圧力分布は,微分方程式であるレイノルズ方程式を解くことにより求められるが,これを解く際には適切な圧力境界条件が必要となる.境界条件が異なれば圧力分布も異なり,その結果,軸受性能も異なってくる.スラスト軸受の場合,各パッドの全周で周囲環境圧力(通常は大気圧)とする圧力境界条件が用いられる.真円ジャーナル軸受や多円弧軸受の場合は,軸方向の軸受端では大気圧境界条件が通常用いられる.一方,円周方向には,真円ジャーナル軸受の場合,最大すきま位置で大気圧とだけ与えるのはゾンマーフェルト境界条件と呼ばれる.この条件を用いると,軸受すきまが円周方向に先広がりとなる部分で負圧が発生することになるが,油膜潤滑では油膜破断が生じて,圧力は大気圧と等しくなることが多い.このため,先広がりすきま内では大気圧とし,先狭まりすきまの正圧だけを扱うのがギュンベルの境界条件である.この条件では円周方向の流量の連続条件が満足されないので,それを改善するために圧力値とその微分値が同時に0となる円周方向位置をもって圧力終端位置とするのがレイノルズ境界条件(スイフト・スティーバー境界条件)である.油溝がある軸受では潤滑油の給油圧力の値がその位置での圧力境界条件として与えられる.このほか,コイン・エルロッドの境界条件などが提案されている.