記録媒体として磁気ディスクを用いてディジタル情報を記録・再生する磁気記憶装置.磁気ディスク装置は情報を記録・再生する磁気ヘッド,情報が記録される磁気ディスク,同一回転軸上に積層された複数枚の磁気ディスクを回転させる磁気ディスクスピンドル機構,磁気ヘッドを微少なすきまを保ってディスク上に保持する磁気ヘッド支持機構,磁気ディスク上に同心円状に設けられたトラックに磁気ヘッドを位置決めする磁気ヘッドポジショナ機構,磁気ディスクスピンドル機構および磁気ヘッドポジショナ機構の制御信号および磁気ヘッドの記録・再生信号を処理する周辺回路から構成される.これらの要素から構成される一つの装置はヘッドディスクアセンブリーと呼ばれる.磁気ディスクはスピンドルに固定されており,交換しない構造となっている.
磁気ヘッドは,原理的には磁気的に記録・再生可能なインダクティブヘッドと再生専用の磁気抵抗効果ヘッドがある.磁気抵抗効果ヘッドはインダクティブヘッドと組合されて磁気ヘッドを構成し,薄膜技術により形成される.
磁気ディスクは,ニッケル-リンめっき膜を被覆したアルミニウム基板またはガラス基板などの硬質基板上に磁性層および保護膜層を形成したものであり,現在では垂直磁気記録方式が主流となっている.
磁気ディスクスピンドル機構は,回転駆動力を発生する電動機が取付けられたスピンドルおよびこれを支持する軸受から構成されている.軸受には従来は玉軸受が広く使用されていたが,トラック位置の振動低減ため,現在は動圧滑り軸受が主流となっている.
磁気ヘッド支持機構は,磁気ヘッドを磁気ディスクに対して,非接触に一定のすきまを維持するスライダと支持ばねから構成されている.スライダは,高速回転する磁気ディスクとの相対的な運動によって流入する空気によって発生する浮上力と支持ばねの押しつけ力と釣合ったところで一定のすきまを維持する.なお,磁気ヘッドの記録・再生素子近傍に薄膜抵抗体からなるヒータを搭載し,これを熱アクチュエータとして用いるThermal flying-height control (TFC)技術により,更なるすきま低減が実現されており,現在では浮上すきま1 nmが実現されている.
磁気ヘッドポジショナ機構は,アクチュエータおよびサーボ機構から構成されている.アクチュエータは通常ボイスコイルモータを利用した回転アクチュエータ型が使われている.サーボ機構は,磁気ディスク面から読込まれるフィードバック信号に応じて磁気ヘッドを目標トラックの中心に位置決めするように動作する.
フィードバック信号の記録方法としては,積層された磁気ディスクの一面の全域に位置情報を記録しておくサーボ面サーボ方式と,データ面の中に一定間隔(通常,セクタ間隔)で位置情報を記録しておくデータ面サーボ方式があるが,現在はデータ面サーボ方式が主流である.