ラテン語のcamera(部屋),obscura(暗い)に由来する.カメラ・オブスキューラは,ピンホール(針穴)を透して写しだされた外界の景色を鑑賞する道具,また画家が投映された映像を模写する道具として誕生した.焦点面に感光体を置いて映像を写し止める道具として用いられるようになったのは,1839年(仏)のダゲール(Louis Jaquès, Mande´ Daguèrre)が銀板写真術を発明して以来のこと.感光体は,銀板-湿板-乾板の時代を経てフィルムの時代を迎え,カメラは手軽に映像化できる道具として急速な普及をとげた.通常,単にカメラといえば静止画像を記録するためのスチールカメラを意味し,フィルムを完全に遮光する暗箱機能のボデー,撮影用レンズ,写し込める範囲を示すファインダ,そして,フィルムに与える光量を時間の単位でコントロールするシャッタなどの基本機構から成り立っている.
撮影の基本操作は,構図を決めて,露出を合わせ,ピントを合わせて,シャッターボタンを押すことで完結する.露出合わせは,光電素子の小型化により,露出計を内蔵することが可能となり,露出計の指示値にしたがって絞りとシャッター速度を決める.初期には,マニュアルで設定していたが,露出計の出力から,自動的に絞り羽根とシャッターの開閉を操作するAE(automatic exposure)が一般的となった.半導体製造プロセスによって製造された二次元に配列した多数のフォトダイオードを用いて,多点の測光が可能となり,スポット測光,中央部重点測光,多分割測光など,被写体の状況に応じて,測光方式を選ぶことができる.一眼レフのTTL(through the lens)測光では,撮影レンズを通過した光を直接測光できるので,精度が高い.ピント合わせは,測光に比べてレンズ駆動のメカニズムが必要なために,電子化が遅れた.電子化される以前のマニュアル方式としては,コンパクトカメラでは,レンジファインダを用いた二像合致により行う方式(パッシブ方式)が一般的であったが,赤外線や超音波を発して,被写体で反射して帰ってくるまでの時間から,距離を算定する機種もあった(アクティブ方式).一眼レフカメラでは,フォーカシングスクリーン上に形成したスプリットイメージプリズム(瞳分割と同等の機能)の上下画像一致,あるいはその周辺に配置された三角プリズムの明瞭度によって,マニュアルで行った.自動的に焦点を合わせるオートフォーカス(AF)は,レンジファインダを用いるコンパクトカメラが先行した.撮影レンズからの像と,ファインダからの像を二つのアレイ状(ライン状)の受光素子上に写し,アレイをスキャンすることにより,二つの像のずれ(ピントのずれ)と方向を検出して,レンズを合焦点位置まで駆動するオートフォーカスが実現された.一眼レフカメラでは,クイックリターンミラー(レフレクトミラー)の中央領域を半透明にして,この後ろに反射ミラーを設置して,反射光をAFセンサに取り込む.AFセンサは,この光を瞳分割し,二つのセパレータレンズを介して,ライン状あるいはクロス状の受光素子上に結像させて,両者の位相から,前ピン,合焦点,後ピンを判別し,またピントのずれ量を出力する(位相差オートフォーカス).合焦点位置までのレンズの駆動量と方向が即座に得られるので,AFの速度が速い特長がある.
画像を写しとる銀塩フィルムの代わりに,撮像素子を用いるデジタルカメラは,1975年にイーストマンコダック社のSteve Sassonによって開発された.100×100 pixel で,磁気テープに記録され,1コマ撮影に23秒要したといわれている.しかし,性能はフィルムカメラに及ぶべくもなく,現在のようなハンディなデジタルカメラ(デジカメ)が商品化されるまでには,長い年月を要した.1990年代半ばになると,外部記憶装置なし,その場ですぐ見られる液晶デスプレイを搭載,パソコンでの再生可能な,現在モデルの原型ともいえる機種が開発され,パソコンの普及,圧縮記録形式の統一などとあいまって,一般に認知されるようになり,2000年代になると,高画素数化,小型化,高性能化が急速に進み,市場規模が一気に拡大し,2005年には販売台数がフィルムカメラを越えた.以降はフィルムカメラ市場は激減して,ほとんどのカメラメーカは,フィルムカメラ製造から撤退した.
デジカメは,コンパクトデジカメ,一眼レフデジカメ,ミラーレス一眼デジカメに大別される.撮像素子から出力される画像信号は,明るさ情報を含むため,これを直接用いたAEが可能であり,また画像のコントラストが最大になるようにレンズを駆動するコントラストオートフォカスを利用すれば,専用のAEセンサ,Aセンサがなくても自動撮影ができる.このようなシンプルな構成で,レンズ交換できない小型低価格なカメラが,一般にはコンパクトデジカメとよばれる.ただし,専用のAEセンサ,AFセンサの装着に関しては,機種に依存して多様である.一眼レフデジカメは,基本的にはフィルム一眼レフカメラのフィルムを撮像素子に置き換えた構成であり,フィルム一眼レフカメラと同様のAEセンサとAFセンサを装備している.ただし,ライブビューモードでは,クイックリターンミラーがは跳ね上がっており,専用のAFセンサが使えない.ミラーレス一眼レフは,クイックリターンミラーがなく,しかも専用のAFセンサを装着しないデジカメで,レンズ交換ができる点で,コンパクトデジカメと差別化されている.ミラーレスカメラでは,撮像素子内に,画素に代わって瞳分割によって前ピン,合焦点,後ピンを検出できるフォトダイオードを離散的に配置した特別の撮像素子が用いられ,これによって合焦点からの位相差信号を得ている(撮像面位相差オートフォーカス).さらに高級機では,コントラストオートフォカスを併用したハイブリッド方式が用いられている.また,AF信号が出力可能な撮像素子を一眼レフカメラに搭載すれば,ライブビューモードでのAFが可能となり,コンパクトカメラに搭載すれば,撮像面位相差オートフォーカスとコントラストオートフォカスの併用が可能となる.