メカトロニクス

mechatronics

 1970年代に日本で生まれた言葉で,メカニクス(mechanics)とエレクトロニクス(electronics)の合成語である.当時すでによく使われていた標語「機電一体化」に代わるスマートな言葉として登場した.さらに,マイクロコンピュータの出現がコンピュータを機械の中に取入れる機情一体化(機械と情報の融合)を可能にした結果,メカトロニクスは省エネ,省資源,知能化による高付加価値化をめざす技術概念に進化し,1973年の第一次石油ショック以後の日本の産業構造を,エネルギー多消費型産業から知識集約型産業へ転換する技術革新の中心となった.また,1980年代の日本経済の発展を支えたキーテクノロジーとして世界中から注目され,急速に世界の共通語として広まった.
メカトロニクス製品の事例は,複写機,プリンタ,FAX,ハードディスク,CD,カメラ,VTRなど情報関連機器のめざましい発展に見られる.さらに,物質やエネルギー関連機械においては,自動車,エアコン,洗濯機,自動販売機などのように,その制御情報機能の高度化が著しい.一方,これら一般消費財は,NC工作機械,産業用ロボット,自動倉庫などのメカトロニクスシステムで構成された自動生産システムで生産されている.また,メカトロニクスシステムの重要な構成要素であるマイクロプロセッサやICなどの半導体製品は,それ自体はメカトロニクス製品ではないが,その生産は露光装置をはじめとする各種半導体製造装置などきわめて高度なメカトロニクスシステムに負うところが大きい.さらに,人工衛星などの宇宙用機器,人工心臓などの医療機器,福祉機器,天体望遠鏡など巨大機械やマイクロマシンなどもメカトロニクスの対象であり,非常に広い範囲の製品やその生産システムに密接に関連している.
上記の例から分かるように,メカトロニクスシステムは,精密な動きを必要とする運動メカニズムと,システムの制御情報機能を受け持つマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)を有していることが大きな特徴である.すなわち,メカトロニクスシステムは,メカニズム,アクチュエータ,センサ,マイクロコンピュータ,エネルギー源の五つの基本要素から構成され,それらが有機的に融合して,知的機械として機能することを期待され,以下のように働く.
外界の情報を視覚センサなどの外界センサで採取し,A-D変換器などのインタフェース回路を介してマイコンに取込む.一方,メカニズムの運動状態などは,エンコーダなどの内界センサで検出してマイコンへ送る.マイコンは,あらかじめプログラムされているアルゴリズムとセンサからの情報に基づき,次の運動や行動を決定し,アクチュエータに対する指令を出力する.マイコンからのディジタル出力はD-A変換器などのインタフェース回路を介してアクチュエータを駆動し,メカニズムを動かす.システムの稼働には,エネルギーの供給は必須であるが,冷却や潤滑などを必要とする場合もある.

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