産業用ロボット

industrial robot

 各産業分野で作業の自動化に使われるロボットの総称.工業用ロボットと称することもある.[JIS B 0134-1986]では「人間の上肢に類似した機能を持ち,対象物を空間的に移動させるもの」と定義され,種々の機種があるが基本的なものは,ロボット本体,制御装置,記憶装置,教示装置からなり,教示装置で教えられた作業軌道を,記憶装置に記録した後,再生し作業を実行する機能を有する.ロボット本体は最大6個の関節と呼ぶ,電動,油圧,空圧などの各種アクチュエータで動力化された可動部を含むリンク型のアームから構成される.また,アクチュエータ出力は歯車減速器,ベルト,ボールねじなどの機構を用いて回転,旋回,スライド運動のいずれかに変換して,関節に組込まれ,この3種の運動形態の関節の配列の仕方によって,直角座標型,円筒座標型,極座標型,関節型,スカラ型などの名称を持つアームがある.関節にはアクチュエータとともに角度・角速度センサが設置されており,制御装置は,これら関節情報と,記憶装置からの目標軌道情報を受けてロボットを教示作業軌道に沿って動かすためのアクチュエータ出力を生成する.教示装置は,アームの各関節に手動で信号を与える一種の操縦かんである.作業を行うに際し,作業者は教示装置を使って,まずアームの先端を作業軌道に沿って動かし,そのときのアームの移動状態を関節のセンサ情報を介して数値化し,記憶装置に記憶する.ロボットに動作を教えることを教示あるいはティーチングといい,教示装置によって軌道を記憶させ,作業実行時にそれを再生する形式のロボットは教示再生型あるいはプレイバック型ロボットと呼ぶ.教示の仕方には,アームの先端が通過すべき位置を記憶させる場合と,通過すべき軌道を連続的に記憶させる場合とがある.前者の教示方式をPTP(point to point)型,後者をCP(continuous path)型と呼ぶ.また,教示装置には,直接ロボットを手動操作せず,グラフィックディスプレイ上に表示した作業対象のモデルを見ながら行う装置もある.このような教示をオフライン教示装置,直接ロボットを操作して行う教示をオンライン教示装置と呼ぶ.制御装置,記憶装置は機能は異なるが,一般に適当な記憶容量を持つマイクロコンピュータを用いて一体化して構成されることが多い.また,数値制御工作機械と同様に,動作を教示装置によらず数値制御プログラムで教示するタイプのロボットもあり,数値制御ロボットと呼ばれる.
プレイバック型ロボットはアーム先端軌道を種々計画する機能を有するが,用途によっては決められた固定軌道に沿って動かすだけで十分な場合もある.そのような場合には,定められた順番に関節を動かすシーケンス制御装置を備えたシーケンス型ロボットが使われる.また,対象を観測し,その状態に応じて作業軌道を修正する必要がある作業などでは,視覚や力覚などのセンサを備えたロボットが使われる.これらは感覚制御ロボットあるいは,センサ情報を知的に解釈し行動を生成する機能を持つ場合は知能ロボットと呼ばれる.
ロボットアーム先端には,例えば,物を搬送する作業には物を把持するグリッパや物を吸付ける吸着型ハンド,溶接作業ではスポット溶接器やアーク溶接器など,作業目的に応じて種々の装置が取付けられる.アーム先端に取付けられ,対象に作用を及ぼす装置を効果器(エンドエフェクタ)あるいはハンドと呼ぶ.

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