動力学

dynamics

 ダイナミックスともいう.物体に作用する力と運動との関係を扱う学問.静力学と動力学を総称して力学というが,静力学が古代ギリシャ時代に始まるのに対して,動力学は近世のG.ガリレイに始まる.動力学の基本的理論体系はニュートンによって完成され,物理学の一部として発展してきたが,近代にいたって量子論や相対論の出現により,ニュートンの力学は古典力学として位置付けられている.動力学と関連がある学問としては,物体の運動を記述する方法を扱う運動学がある.動力学の内容は質点の力学と質点系の力学に大別され,質点の力学においては,dp/dtf(pmv:運動量,m:質量,v:速度,t:時間,f:力)がもっとも基本的な方程式である.この式の両辺を積分することにより,運動エネルギーと仕事量との関係が導かれる.また,力が質点の位置のみに依存する場合には,運動エネルギーと位置エネルギーの和,すなわち力学的全エネルギーの保存則が導かれる.質点系の力学においては,質点の方程式が連立するが,質点間に作用する内力は打消し合うから,全運動量Pと全外力FについてdP/dtFが成り立つ.回転運動については,全角運動量Lと全トルクTについてdL/dtTが成り立つ.剛体の力学,弾性体の力学,流体の力学などは原理的には質点系の力学の応用である.動力学の対象となる現象を記述した方程式が動力学モデルである.同じ現象でもその解析の目的に応じてモデルは異なる.動力学モデルは一般に入力と出力の時間的関係を表現しており,微分方程式によって記述される場合が多い.