フィードバック制御系の安定性解析法として次のことがよく知られている.安定要素で構成される1入力1出力系において,1巡ループのゲインが1未満であればシステムは位相特性に関係なく安定であるという.これはゲイン余有(ゲイン余裕)と呼ばれる.この考え方を一般化して多変数制御系に拡張したものがスモールゲイン定理である.多変数フィードバック制御系ではH∞ノルムを用いて1巡ループのH∞ノルムが1未満であれば閉ループ系は安定であると定義する.スモールゲイン定理はロバスト制御理論においては極めて重要で,ロバスト安定性解析には欠かせない定理である.