原子力発電所

nuclear power plant, nuclear power station

 原子力プラントともいい,発電の目的で蒸気を発生させる原子炉を発電用原子炉あるいは発電炉という.原子炉内の制御された核分裂連鎖反応により発生した熱で蒸気を生成し,その蒸気を用いてタービン発電機を回し発電する.すなわち,火力発電所のボイラが原子炉に置換わったものであるが,火力発電所にはない安全性を確保するための多くの安全設備が設置されているところに特徴がある.
原子炉は,核分裂連鎖反応の仲介をする中性子を減速させるために使用される物質と核分裂により発生した熱を原子炉外へ取出す物質により分類され,現在発電用原子炉として用いられる原子炉には,世界的に主流になっている軽水減速軽水冷却型,おもにイギリスで用いられている黒鉛減速ガス冷却型(GCR,AGR),旧ソ連諸国で使用されている黒鉛減速軽水冷却型(RBMK),カナダで開発された重水減速重水冷却型(CANDU),日本で開発され,原型炉が運転中の重水減速軽水冷却型(ATR),減速材を用いない高速増殖炉(FBR)などがある.
原子力発電所は,原子炉建屋,タービン建屋,その他各種補助建屋で構成される.以下に現在世界的主流となっている軽水減速軽水冷却型原子炉(軽水炉)を用いた原子力発電所の概要を記す.
軽水炉には,沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類があるが,両者は原子炉の冷却水の使用法が異なっている.BWRでは原子炉の冷却と蒸気の発生を同時に行い,その蒸気を直接タービンに導き発電を行う直接サイクルであるのに対し,PWRの原子炉では高温高圧水を作り蒸気発生器に導き,蒸気発生器で熱交換を行い蒸気を発生させその蒸気をタービンに導き発電を行う間接サイクルである.
BWRの場合,原子炉圧力容器とその関連施設(原子炉再循環ポンプなど)が原子炉格納容器に納められており,この原子炉格納容器を含む工学的安全施設(ECCSなど)や補助設備が,原子炉建屋に納められている.
一方,PWRの場合,原子炉圧力容器,加圧器,蒸気発生器,一次冷却材ポンプとその関連施設が原子炉格納容器に納められており,この原子炉格納容器と補助設備,工学的安全施設(ECCSなど)が原子炉建屋に納められている.
両者とも,原子炉建屋の最上階に設置されている燃料交換機を用いて燃料交換を行う.使用済み燃料は,使用済み燃料貯蔵プールなどに貯蔵される.タービン建屋には,原子力用タービン,発電機,復水器などが納められている.原子力発電所では,火力発電所と比較し冷却水の温度/圧力が低いため,湿分の多い蒸気を用いてタービンを回す必要があり,発電効率を向上させるために翼長,容積が大きくタービン翼にドレン溝をつけたり,静翼部に湿分除去装置を設けたりした原子力用タービンが用いられている.このほかに,補助ボイラ建屋,海水熱交換器建屋などの補助建屋がある.

1003708_01.jpg

1003708_02.jpg