核分裂

nuclear fission

 原子核が2個(ごくまれには3個)の原子核に分裂する現象.主としてウランやプルトニウムのような重い原子核で生じる.核分裂に伴って2~3個の中性子やガンマ線やニュートリノが発生する.核分裂を生じさせるには中性子,ガンマ線などを入射し,原子核を励起してやるとよい.核分裂の結果生じる原子核(核分裂片)と,それが放射性崩壊して生じる原子核を総称して核分裂生成物(fission products,FP)という.1核分裂当たり約200MeVのエネルギーが核分裂片や中性子,ガンマ線の運動エネルギーとして放出され,周囲の物質との衝突により熱となる.どんなエネルギーの中性子を入射させても核分裂を生じさせられる核種を核分裂性核種という.天然に存在する核種ではウラン-235のみが核分裂性核種であり,人工的に作られる核種ではウラン-233,プルトニウム-239,-241などが核分裂性核種である.ウラン-238やトリウム-232などは約1MeV以上の高速中性子を入射したときのみ核分裂を起こす.またこれらの核種は中性子を捕獲すると核分裂性核種に変換されるので,親物質という.核分裂性物質を含む媒質では核分裂が生じると,その結果発生する中性子がほかの原子核を次々と分裂させ,いわゆる核分裂の連鎖反応が生じる.ウラン-235 1gがすべて核分裂すると\(2 \times {10^{10}}\)calのエネルギーを生じる.