フラッディング

flooding

 垂直流路壁に沿って液膜が流下し,流路中央部を気相が上向きに流れる気液対向二相流では,液流量を一定に保ち,気相流量を徐々に増していくと,気液界面で液膜に働く上向きのせん断応力が増大する.気相流速がある値に達すると,界面せん断応力によって液の一部が押上げられるようになる.これをフラッディングといい,気液対向二相流の限界を表す.フラッディング条件は二相流のドリフト束モデルによって,気液対向二相流が存在し得る限界条件として,図式的に説明されるが,実際上は下記のウォリスの式などが用いられる.\[{j_G}^{*1/2} + m{j_L}^{*1/2} = C\]\({j_k}^* = {j_k}{\left\{ {{\rho _k}/gD\it \Delta \rho } \right\}^{1/2}}\;\left( {k = G,L} \right)\)は気,液相の体積流束jkの無次元量(Dは流路直径,ρk, Δρは気液の密度および密度差).mは液粘性に依存する定数,Cは流路入口の形状に依存する定数.また,上式の\({j_k}^*\)をクタテラーゼ数\[K{u_k} = {j_k}{\left\{ {{\rho _k}^2/\left( {\sigma g\it \Delta \rho } \right)} \right\}^{1/4}}\]で置換えたものもある(σは表面張力).フラッディング現象はバーンアウト機構として作用する場合もあり,気液が対向して流れる熱交換器,蒸発器,そのほかのプラントの作動限界を与える.特に,原子炉においては冷却材喪失事故で,緊急炉心冷却水が炉心上部タイプレートのオリフィスから炉心に注入される際,炉心から吹上げる蒸気によるフラッディングにより,炉心への液の流入が阻止され,炉心冷却が阻害される恐れがある.また,加圧水型炉ではコールドレグに続くダウンカマから下部プレナムへの冷却水の流入が一部阻止され,再冠水速度が減少するなど,安全性に直接関係する重要な現象である.