沸騰熱伝達

boiling heat transfer

 液体と液体の飽和温度以上に加熱された固体面とが接する系においては,加熱面より液体に伝えられた熱により沸騰が起こる.このように液体の沸騰を伴う熱移動を,沸騰熱伝達と呼ぶ.沸騰熱伝達は,固体表面のみならず,直接接触熱交換器のように高温の液体中に吹出された液体が加熱されることによっても起こる.沸騰熱伝達は,パワープラントや空調機器などのように蒸気生成を行う熱機器や,原子炉の緊急炉心冷却系や鋼材冷却などのような冷却手段として重要である.沸騰熱伝達は,液体の流動形式や温度により発生蒸気の挙動が異なるため,液体の流動形式によりプール沸騰(自然対流沸騰とも呼ぶ)と流動沸騰(強制対流沸騰とも呼ぶ),液体の温度により飽和沸騰(バルク沸騰とも呼ぶ)とサブクール沸騰(表面沸騰とも呼ぶ)に大別される.流動沸騰はさらに,液体が流路内を流れる内部流動沸騰と,外部を流れる外部流動沸騰に大別され,前者では発生蒸気の集積により流動様相が流れ方向に変化するため(二相流),現象が複雑となる.沸騰熱伝達の特性は,加熱面の過熱度に対して一般に極大値(限界熱流束)と極小値(極小熱流束)とを有する沸騰曲線で示され,これにより核沸騰,遷移沸騰および膜沸騰に区分される.