電磁流体力学

magnetohydrodynamics

 導電性流体(液体金属やプラズマなど)の磁場内での運動は流体中に電流を誘起する.流体の運動は誘導電流と磁場との干渉により生じる電磁力(ローレンツ力)により影響を受ける.このように,導電性流体の運動と電磁場との相互作用を研究する学問分野が電磁流体力学(MHD)である.管内流に垂直磁場を印加すると磁場方向に速度分布が平たん化し(ハルトマン効果),乱れが抑制されて層流化するのはMHD現象の代表例である.MHDの研究は当初,天文学者らによって行われ,その後,人工衛星や宇宙ロケットによる極超音速飛行,MHD発電,核融合炉におけるプラズマの安定性や液体金属を用いた冷却系の問題,大容量電磁ポンプ・電磁流量計の開発など工学的問題に関連した研究がなされてきた.最近,対流の抑制,浮揚,保持,形状制御など電磁力を利用した新しい材料プロセシングやプラズマを利用した新しい材料合成の技術開発が活発に進められている.電磁流体力学における流れの相似条件では通常の流体力学で現れるレイノルズ数Reやマッハ数Mの他に,磁気レイノルズ数Rm∝[誘導磁場]/[印加磁場],ハルトマン数Ha∝\(\sqrt {電磁力/粘性力} \),スチュアート数N∝電磁力/慣性力,磁気プラントル数Pm∝[渦線の拡散]/[磁力線の拡散],アルベン数A∝[流速]/[アルベン波の伝ぱ速度],ホール係数β∝[ファラデー電流]/[ホール電流]などが現れる.