一般に物質は圧力や温度を変えるとその体積が変化し,したがって密度が変化する.圧力の変化に応じて体積や密度が変化する性質を圧縮性,温度の上昇に伴って体積が増加する現象を熱膨張という.圧力や温度が変化するとき,圧縮性や熱膨張により流体の体積や密度の変化が無視できない場合,その流体を圧縮性流体といい,圧縮性流体の流れを圧縮性流れという.液体の圧縮性や熱膨張は気体に比べてきわめて小さく,水撃などの圧力波を取扱う場合を除き,一般に液体は非圧縮性流体と見なしてよい.気体は容易に圧縮し得る.気体の流れを考え,そのマッハ数をMとすれば,Mが比較的小さければ密度ρの変化割合Δρ/ρ≈M2/2と表される.したがってΔρ/ρが5%以上を圧縮性流れとすればM>0.3の流れがそれに相当する.圧縮性流れはマッハ数によって亜音速流れ,遷音速流れ,超音速流れ,極超音速流れに分類される.圧縮性流れの重要な特徴の一つはチョーク現象である.これは管路や流路内の流れがある断面でマッハ数M=1の臨界状態になることをいい,流れがある断面でチョークすると,それより上流の状態や質量流量は下流の流路形状や圧力などを変えても一定に保たれる.また密度が一定の非圧縮性流体の音速は理論上無限大となるが,圧縮性流体の音速は有限である.このため圧縮性流体の超音速流れでは衝撃波のような状態量の不連続面が形成され得る.