フラックス

flux

 フラックスは焼成フラックスと,溶融フラックスに分類される.焼成フラックスはその製法での焼成温度が400~550℃であるボンドフラックスと800~1000℃の焼結フラックスの2種類があるが,我が国では前者のボンドフラックスがおもに開発され,実用化されており,1988年の[JIS Z 3352]ではボンドフラックスとして総称されている.ボンドフラックスは所定配合の原料鉱石粉と合金元素などを混合し,粘結剤のけい酸ソーダを加え,それら成分が変質しない焼成温度400~550℃で作製される.このフラックスは,脱酸剤や合金元素の添加が可能,フラックスの消費量が少ない,大入熱溶接にても作業性,溶接金属の性質が良好である,アークの安定性が良好で,狭開先での溶接が可能であるなどの特徴を持っている.溶融フラックスは所定配合の原料鉱石粉を1200℃以上の温度に電気炉などで溶融し,冷却後,所定の粒度に粉砕し,整粒したガラス状のフラックスである.化学成分によって,MnOを事実上含まない低MnO系,5~30%MnOを含む中MnO系,30%以上のMnOを含む高MnO系があり,さらに塩基度により分類され,高速溶接,多層溶接,溶接金属の機械的性質が異なるので,使用目的に応じて選択され,また,粒度によって使用電流を選択する.このフラックスはガラス状であるので吸湿し難く,1000A以内での低・中電流にて作業性が良好である,平滑な美しいビードが得られるなどの特徴を持っている.