スラブ法は,上界法,有限要素法と並んで,塑性加工時の被加工材の変形挙動を解析する有力な近似解法の一つである.解析の手順はおおむね次の通りである.①被加工材中の塑性変形域を仮定する.②仮定した塑性変形域を複数のスラブ要素に分割する.ただし,各スラブ要素内の応力およびひずみは一様であると近似する.③スラブ要素に作用する応力および力の釣合い式を導く.④スラブ要素が塑性変形するのに要する降伏条件式を導入する.⑤上記釣合い式と降伏条件式とを連立させ,応力または力に関する境界条件を用いつつこれら方程式を解き,塑性変形域内の応力分布あるいは被加工材と工具面との接触圧力分布を求める.スラブ法は,理論構成が単純であり,数値計算に多くの労力を要しないことから,計算機が発達する以前から,塑性加工の有力な解析法として広く用いられてきた.幅対称すえ込み加工の解析,板圧延の平面ひずみ解析,丸棒・丸線の押出し・引抜き解析,などが代表的な応用事例であり,これまでに多くの成果が得られている.現在,塑性加工のみならず広く材料加工技術の中で,最も高度に発達していると考えられる板材の圧延加工技術の基礎は,このスラブ法の広範な活用によって確立されたものであり,また,各種棒・管材の押出し・引抜き加工についても同様なことがいえる.ただし,一般の型鍛造のごとく,被加工材の三次元変形が主となる加工プロセスや,上述の要素内での応力・ひずみの一様性を近似することが,現実性を著しく損なう場合には,スラブ法を適用することができない.