き裂を有する物体では,最終破壊以前に,き裂先端近傍にマイクロクラックあるいはマイクロボイドなどの微小破壊の生じた領域が形成される.この破壊進行域(損傷域)をプロセスゾーンといい,き裂進展面に残された破壊進行域の跡をプロセスゾーンウェイクという.プロセスゾーンの力学状態を記述することは非常に困難であり,破壊力学では,ブラックボックスとして取扱ってきた.しかし,プロセスゾーンは破壊エネルギーの吸収あるいはき裂架橋の観点から強靭化機構の一つと考えられ,材料の微視組織との関連で研究が進められている.