疲労

fatigue

 繰返し荷重による破壊を疲労破壊という.1回の負荷では破壊しない荷重でも,荷重を繰返し加えると,最初に材料中に不可逆な塑性変形により微小き裂が発生し,このき裂が成長して,やがて部材が破壊する.通常,疲労にともなう部材の変形は小さく,疲労の進行を検出することが難しく,破断が突然に生じて機械および構造物の事故につながることが多い.このため,長期にわたって使用する機械や構造物の設計あるいは信頼性の保証のためには疲労に対する対策が不可欠である.破断寿命が104から105回の繰返し数を境にして,低繰返し数の場合を低サイクル疲労,高繰返し数の場合を高サイクル疲労と区別するが,疲労の微視的機構に本質的な差異はない.設計における寿命評価では,低サイクル
疲労に対しては繰返しひずみと寿命の関係を与えるコフィン・マンソン則を用い,また高サイクル疲労では繰返し応力と寿命の関係を与えるS-N曲線を用いる場合が多い.鉄鋼材料では,負荷を繰返しても破断しない限界の疲労限度と呼ばれる応力が存在するが,非鉄材料では存在しない.一方,欠陥やき裂を含む部材の設計に対しては破壊力学的手法が有効で,これをもとに疲労き裂の進展速度や,残存している疲労余寿命あるいは破壊強度が求められる.疲労強度に影響を与える因子は多く,材料特性や温度,環境ばかりでなく,実働状態での荷重の把握が重要である.