ひずみ

strain

 荷重が加えられたとき物体は変形するが,このとき生ずる伸びやゆがみ変形の程度を,定量的に表す量がひずみである.ひずみは,単位長さ当たりの変形の割合を表す量であり,無次元量である.ひずみには,垂直ひずみ(引張りまたは圧縮ひずみ)とせん断ひずみがあり,また体積変化を表す体積ひずみがある.一次元の一様伸びの場合,長さlの物体の伸びをuとすると,垂直ひずみεは,単位長さ当たりの変位(伸び)として,εu/lで与えられる.また,負荷方向と直角な方向のひずみは横ひずみと呼ばれる.変位が物体中の位置によって異なるときには,ひずみも場の量となる.例えば,x方向の変位をuとすると,x方向のひずみ成分εxは,変位の微分(こう配)としてεx=∂u/∂xで与えられる.三次元では垂直ひずみの成分は3個となる.また,物体中に互いに直角をなす面を考え,その変形後の角度変化(ゆがみ)を表す量として,せん断ひずみγが定義される.三次元の場合,独立なせん断ひずみの成分は3個となる.垂直ひずみが極値をとる場合を考えると,主ひずみが定義される.主ひずみは一般に3個あり,主ひずみ方向ではせん断ひずみは0となる.また,最大せん断ひずみの方向は主ひずみと45°をなす方向に生ずる.ひずみに関する重要な関係式として,ひずみ-変位関係式,あるいはこれと等価なひずみの適合条件式がある.以上のひずみの定義は,工学ひずみと呼ばれるものである.これに対して,固体力学的な取扱いでは,せん断ひずみの大きさを角度変化の2分の1としたテンソルひずみが用いられる.変形が大きくなり有限変形になると変位の一次微分のほかに,二次以上の微分の項を考慮したり,対数ひずみや伸張比と呼ばれるひずみの定義が用いられる.すなわち,変位が実験的に測定される量であるのに対して,ひずみは変位から定義される量であり,対象とする問題に適したひずみの定義を選ぶ必要がある.【ひずみ-変位関係式ひずみテンソル