物体表面の急激な加熱または冷却によって物体内に熱ひずみが生じ,これに伴って物体内に衝撃的な熱応力が発生する現象である.物体の表面が急冷されると,物体の表面近傍の収縮が内部の物体により拘束されて物体表面に引張応力が発生する.逆に物体の表面が急加熱されると,物体表面には圧縮応力が発生する.発生する熱応力の大きさ,分布およびその時間変化は,その物体の物理的性質,形状・寸法および加熱・冷却の伝熱条件によって異なる.熱応力に対する材料の強度は,破壊限界ひずみによって決まる.このため,熱衝撃はセラミックスのような破壊限界ひずみの極めて小さい脆性材料で問題となる場合が多い.材料の耐熱衝撃性は,使用目的や用途などによって以下の熱応力破壊抵抗パラメータで評価される.材料中の微小き裂が熱衝撃によって成長し,それによって強度低下が問題となるときの抵抗性を熱衝撃破壊抵抗という.材料の崩落やはく離などの損傷が重要となる場合の抵抗性を熱衝撃損傷抵抗という.また,熱応力が材料の破壊強度以下の場合でも,環境によってはき裂が緩やかに成長するため,繰返し熱衝撃を与えると最後には熱疲労破壊が生じる.このときの抵抗性を熱疲労破壊抵抗という.これらの各抵抗性に対し,材料の物理的性質および伝熱条件を用いた熱衝撃係数や衝撃破壊抵抗係数などの各種の抵抗係数が提案されている.