塑性理論

theory of plasticity

  塑性を示す物体の力と変形の関係を数学的に取扱う連続体力学の一分野であり,塑性力学あるいは塑性学ともいう.その内容はおもに次の二つからなる.第一は,塑性変形の構成式を定式化することである.塑性変形は負荷履歴に依存する極めて複雑な不可逆現象であって,それを精度よく記述できる構成式の確立は塑性理論の最も重要な問題である.塑性構成式は,これまで,現象論的観点と,金属物理学的観点の二つの立場から研究されている.現象論的塑性理論は,おもに塑性変形の開始を規定する降伏条件,塑性ひずみ速度テンソルの成分比を規定する流れ[法]則,ならびにその大きさを定める硬化[法]則からなるが,これらの定式化のためにはそれらの負荷履歴への依存性をいかに表現するかが鍵となる.現在では,等方硬化変数や移動硬化変数などの内部状態変数を導入し,その発展式を適切に定式化する方法が最も成功をおさめている.一方,金属物理学的構成式には,すべりを塑性変形の素過程と考える結晶塑性モデル,あるいは転位運動を基礎とする動的塑性構成式などがある.塑性理論の第二の内容は,塑性体に関する初期値・境界値問題を定式化し,塑性体内の応力,ひずみ,変形などの分布を明らかにすることである.おもな対象には,構造要素の変形と強度,塑性加工過程の解析などが挙げられる.これらの問題を解くために,以前には,すべり線場法や極限解析などの近似理論がよく用いられたが,最近では精度の高い構成式と実際に近い境界条件を用いた数値解析法が用いられることが多い.【塑性ポテンシャルひずみ増分理論