安全率とは不具合現象に関して,不具合発生条件の下限界\({{\rm{X}}_{\rm{L}}}\)と不具合原因の上限界\({{\rm{Y}}_{\rm{U}}}\)を考え,\({{\rm{X}}_{\rm{L}}}\)に対する\({{\rm{Y}}_{\rm{U}}}\)の比率\(\eta \)をもって不具合現象が発生しない余裕を定量的に表す尺度である.例えば,ある荷重条件下での構造部材の破壊を不具合現象の例にとると,\({{\rm{X}}_{\rm{L}}}\)は部材の強度\({{\rm{S}}_{\rm{R}}}\)の下限値にあたり,\({{\rm{Y}}_{\rm{U}}}\)は作用荷重により部材に生じる応力\({{\rm{S}}_{\rm{S}}}\)の上限値(あるいは許容値)にあたる.したがって,部材が破壊しない余裕尺度としての安全率\(\eta \)は\(\eta = {S_{\rm{R}}}/{S_{\rm{S}}}\)のようになる.安全率\(\eta \)は,機器・構造物の重要度あるいは過去の経験に応じて決定されるのが通常である.また,ばらつき特性(平均値\(\mu \),分散\(\sigma \))を考慮した決定法もあり,部材強度\({{\rm{S}}_{\rm{R}}}\)の下限値には\(\mu - 2\sigma \)程度の値を,部材許容応力\({{\rm{S}}_{\rm{S}}}\)の上限値には\(\mu + 2\sigma \)程度の値が用いられる.通常,部材の強度\({{\rm{S}}_{\rm{R}}}\)は材料試験による標準試験片の強度\({S_{{\rm{R0}}}}\)に強度低下係数\(\kappa \)を考慮して\({S_{\rm{R}}} = \kappa {S_{{\rm{R0}}}}\)のように求められる.また,この強度低下係数\(\kappa \)は切欠係数\({{\rm{K}}_{\rm{f}}}\),寸法効果係数\(\xi \),表面効果係数 \({\xi _1}\),はめあい効果係数\({\xi _2}\),環境効果係数\({\xi _3}\)などを考慮し,\(\kappa = {\xi _1}{\xi _2}{\xi _3}{{\rm{K}}_{\rm{f}}}\)のように求められる.一方,部材の許容応力\({S_{\rm{S}}}\)の方も,通常,設計応力\({{\rm{S}}_{{\rm{S0}}}}\)に対して荷重割増し係数\(\nu \)が機器・構造物に応じて種々考慮され,\({S_{\rm{S}}} = \nu {S_{{\rm{S0}}}}\)のように求められる.【許容応力】