技術革新

technological innovation

 オーストリアの理論経済学者シュンペーター(1883~1950)が,生産技術の進歩発達による革新に限らず,技術の成果が経済に導入され普及する過程で,新商品の開発,新市場または新資源の開拓,新しい経営,管理組織などを含め,長期の景気変動において,不連続な変化を作り出す起動力として取上げた概念であるが,今は科学技術の飛躍的発展と結びついて,工業分野では技術革新の狭い意味で用いられている.技術革新の技術は科学技術をさしているが,一世紀余り前までは科学と技術は,伝統的に性格も異なり長い間分離していた.イギリスでは1615年にすでにギリシャ語のテクネーと,ロゴスを結びつけた語が用いられており,その後ドイツでもテヒノロギーが使われたが,いずれも技術論を意味していた.19世紀に入ると工業先進国のヨーロッパやアメリカでは,科学技術の意味に近い英語として,テクノロジーが用いられるようになった.しかし基本的には応用科学の語の方が一般に用いられた.日本は明治維新以降の近代化において,ヨーロッパやアメリカの近代技術を工学として,初めから科学と技術を一体の学問として受入れたので,科学技術の概念がヨーロッパやアメリカに比べ,早期に成立する環境にあったことは,その後の工業の発達との関連において,特筆すべきことである.