いくつかの機器を内部に包含するような設備,装置などの熱設計を行う場合,それらの設備などが運用される熱的環境においてどのような温度となるかを予測するための計算手法で,地上用システムだけでなく,人工衛星などの宇宙機の熱解析にもよく用いられる.人工衛星を一つの例として考えると,まず衛星の各部を複数の要素に分割して,各要素を一定の熱物性を有する節点(ノード)と見なし,節点間をふく射と伝導による熱伝達を表すパラメータで結合させた熱回路網すなわち熱数学モデルを作成する.このようなモデルの一つの節点における熱平衡は次の微分方程式で表すことができる.\[\begin{array}{l} {C_i}\frac{{d{T_i}}}{{dt}} = {\alpha _i}Ps + Pc - {A_i}{F_i}{\varepsilon _i}\sigma T_i^4\\ \quad - \sum\limits_{j = 1}^n {{k_{ij}}\left( {{T_i} - {T_j}} \right)} - \sum\limits_{j = 1}^n {{r_{ij}}\sigma \left( {T_i^4 - T_j^4} \right)} \end{array}\]\[\begin{array}{*{20}{l}} T:温度&Ps:太陽ふく射強度\\ t:時間&Pc:自己発熱量\\ C:熱容量&A:表面積\\ α:太陽光吸収率&F:形態係数\\ ε:熱ふく射率&k:熱伝導係数\\ σ:ステファン・ボルツマン定数&r:ふく射交換係数 \end{array}\]この式の右辺第1項は節点iへの軌道熱入力,2項目は自己発熱,3項目は宇宙空間への放熱,4,5項はほかの節点jとの伝導とふく射による熱交換量を示しており,モデルの全節点数がn個であれば,n元連立方程式となり,これを解くことにより,各節点の過渡および平衡温度を求めることができる.【熱数学モデル】