サイ-ウ則

Tsai-Wu failure criteria

サイ-ウ則は,直交異方性材料に適用される破壊強度則の一つであり,ホフマン則を拡張したものである.応力の多項式の2次の成分をすべて考慮し,せん断の正負などの不要項を削除したものであり,以下の式で表される.この式を満たす場合に破壊したと考える.

$$F_i\sigma_i+F_{ij}\sigma_i\sigma_j=1(i,\ j=L,\ T,\ Z,\ TZ,ZL,LT)$$

ここで上式において,いま一方向繊維強化複合材料を考えると,下付き添え字のL, T, Zはそれぞれ繊維方向,繊維直交方向,積層方向を示し,$\sigma_{()}$は局所座標系の応力を表す.$F_i$, $F_{ij}$は引張,圧縮およびせん断強度より求まるパラメータである.いま,平面応力状態($\sigma_Z=\sigma_{TZ}=\sigma_{ZL}=0$)かつ直交異方性材料とみなす場合に,上式は以下のように表すことができる.

$${F_L\sigma_L+F_L\sigma_T+2F_{LT}\sigma_L\sigma_T+F}_{LL}{\sigma_L}^2+F_{TT}{\sigma_T}^2+F_{LTLT}{\sigma_{LT}}^2=1$$
$${F_L=\frac{1}{F_L^t}-\frac{1}{F_L^c},F_T=\frac{1}{F_T^t}-\frac{1}{F_T^c}, \ F}_{LL}=\frac{1}{F_L^tF_L^c},\ F_{TT}=\frac{1}{F_T^tF_T^c},$$
$$\ F_{LTLT}=\frac{1}{{F_{LT}^s}^2}, F_{LT}={F_{LT}}^\ast\sqrt{F_{LL}F_{TT}}\ ,\ -1<{F_{LT}}^\ast<1$$

ここで,上付き添え字のt, cおよびsはそれぞれ引張,圧縮およびせん断を表しており,例えば$F_L^t$の場合,繊維方向引張強度を意味する.なお$F_{LT}$は,垂直応力成分の相互干渉(カップリング)の項であり,係数である${F_{LT}}^\ast$が上式において材料定数となっている.S.W. Tsai & H.T. Hahn : Introduction to Composite Materials, Technomic, Westport, CT(1980).によると,十分な実験値がない場合には,${F_{LT}}^\ast=-0.5$ととるように提案している.