====== バイオテクノロジー ====== ==== biotechnology ==== {{tag>..c02}}  1. 植物生産 ・植物工場:植物の生育環境を人工的に最適に制御することによって,植物の収獲を計画的かつ効率的に行う生産システム.光源の種類によって太陽光,人工光,および両者の混合型に分かれる.図は太陽光利用型で,チェーン・コンベアによってウレタン培地の栽培円筒を上下させる方式の植物工場.(高辻正基,植物工場,講談社,1979) ・細胞融合 細胞壁を除去して,細胞中身の原形質体(プロトプラスト)を取出し,プロトプラスト同士を融合させることを細胞融合という.ジャガイモ(ポテト)プロトプラストとトマトプロトプラストの体細胞雑種ポマトが有名な例である. 2. 有用物質の生産 ・バイオリアクター 生化学的反応や生物反応を人工の容器内で再現し,有用物質の生産・加工するシステム.図は酵素(アミノアシラーゼ)を含む流動層でL-フェニルアラニンを生産するバイオリアクター.(C. Wandrey: Biotech. 83, P581, 1983) ・光合成バイオリアクター クロレラやスピルリナなどの微細藻類の光合成を利用して,宇宙ステーションなどのような閉鎖空間内で炭酸ガスと酸素のガス交換を行うシステム.(Mori1985) 3. 発酵工学,古典的バイオテクノロジー 発酵とは,有機物が微生物によって分解される現象をいうが,特に食糧,飼料,医薬品,農薬の製造プロセス,エネルギー生産プロセス,環境浄化プロセスにおける生物工学的手法を意味する.古くから行われてきたアルコール,パン,チーズ,みそ,しょう油などの製造プロセスであり,いわば古典的なバイオテクノロジーである. 4. メタバイオテイクス:人工物である要素を基に,生命現象を伴うシステムを構成または合成する新しい生命科学技術.マイクロマシン内でタンパクを合成するアイデアなどが考えられている. ・バイオミメテイクス:生物機能を模倣する科学技術.必ずしも生物自身を用いるのではなく,機能を模倣,合成して,生物の有用的な部分を利用する工学.生物の動きをまねるロボットの開発を中心とする分野や生化学的な側面から人工酵素や人工細胞などを扱うバイオミメテイク・ケミストリーなどの分野がある. 人工生命:生命現象のダイナミクスを捉えた計算機シミュレーションによって人工的に生命系を合成して,生命の特性を理解しようとする. 5. バイオメカニクス:生命組織体全般の構造と機能を力学的視点から捉え,ミクロからマクロにいたる生体機能を解明し,診断や治療の医療技術および新しい産業技術を生み出そうとする領域. 動脈内表面に分布している内皮細胞に力が加わると,形態や機能の変化をもたらし,さまざまな物質を分泌する. 骨格筋を構成する筋肉線維アクチンとミオシンとの相互作用により,化学的エネルギーが力学的エネルギーに変換される. べん毛モータ:バクテリアのべん毛は生物界で唯一つの回転するモータで,水素イオンの流れによって駆動される.回転速度は15000rpmに達するといわれている.〔絵で学ぶバイオテクノロジ入門,オーム社〕 6. 医療 ・バイオ人工臓器 実際のすい臓のβ細胞や肝細胞を多孔性合成膜のような人工的な系で培養させ,実際の臓器機能の代替を実現させる人工臓器. ・バイオマテリアル 生体内外で用いられる人工臓器などの医療装置の材料は,生体組織や血液と適合する必要がある.現在では合成材料のほかに生体組織(例えば心臓弁)や細胞そのものが使われている. ・組織再構築による人工血管 血管組織を構成する細胞を分離して,一様に混合させて再び移植すると,細胞の高密度集積,配向および形質変換,マトリックスの産生と自己組織化による繊維形成,層状化および立体構築により血管壁が再構築される.(松田武久,1995) ・遺伝子治療 遺伝子に欠損があるため,ADAという酵素を作れない.そこで,患者の血管中のリンパ球を培養し,DADを作る遺伝子運搬体(レトロウイルスベクタ)を用いてリンパ球内に導入し,患者の体内に戻す.〔日経サイエンス,1994〕 8. 生命・情報・バイオエレクトロニクス ・バイオコンピュータ 生物機能に近づくバイオコンピュータの概念として,生体素材のバイオチップを基にしたバイオチップコンピュータ,人間の脳の動作原理を背景にしたバイオアーキテクチャコンピュータ,超並列マシンのような非ノイマン型コンピュータ,人工生命を基にしたコンピュータなどが提案されている. ・バイオ素子:生体内の分子の構築による機能素子で,生体内の分子や分子集合体は生命現象を営むための機能を持っているため,機能素子として利用できるものが多い. ・バイオセンサ 生体分子は鋭敏な分子認識機能を持っており,このような機能を有効に利用するバイオ素子がバイオセンサである.分子認識機能を持つ生体分子は,酵素,抗体,結合タンパク質,レセプタなどであり,さらに細胞内小器官,組織,微生物,動物,植物細胞などに存在している. 9. 畜産・漁業 体外受精による胚の大量作出,家畜の性制御,外来遺伝子導入による形質転換動物の作出(トランスジェニック家畜),核移植によるクローン家畜の作出など.図は核移植によって作られた一卵性双子の例.〔バイオテクノロジー概論,朝倉書店〕 {{popup> :1009951_01.jpg?400 }} ~~NOCACHE~~