非振動的なエネルギーがその系の内部で振動的な励振に変換されて発生する振動.持続する振動において自励振動以外では励振力は振動体の運動とは無関係で,何らかの手段で振動体の運動を拘束しても励振力は消えないが,自励振動では運動を拘束すれば励振力も消滅する.演奏中のバイオリンの弦の振動のような摩擦による自励振動,飛行機翼に起こるフラッタのような流体力による自励振動,制御系を内蔵する振動系に起こる制御関連自励振動の三つが典型的である.自励振動の発生のための必要条件は,振動系に初期外乱が与えられること.利用できる何らかのエネルギーの場にあること.このエネルギーを励振力に変換する機構が存在することである.自励振動が発生する振動系の振動方程式の典型例は減衰項が負であるもので,振幅は時間とともに指数関数的に増大する.このとき,減衰項に非線形性があり,振幅の増加に伴って減衰係数が小さくなるような場合には,初めに発散した振動はやがて一定値に収れんしリミットサイクルに入る.波形がくずれて弛緩振動になることもある.また負減衰自励振動とは別に,振動方程式の各項の係数が時間とともに変化するという特長を持つ係数励振振動も不安定振動であり,これを自励振動に含めることもある.