軽い原子核どうしが核反応により融合して,重い原子核が作られる現象をいう.重い原子核が核反応により分裂して,軽い原子核が作られる核分裂と対比される.
軽い原子核の核融合反応では,原子核の結合エネルギーの一部が開放されて,化学反応に比べて膨大なエネルギーが発生する.例えば重水素と三重水素との反応では,1回の反応当たり17.6MeVのエネルギーが発生する.太陽のエネルギー源は,4個の陽子(水素の原子核)から最終的にヘリウムの原子核が生成される核融合反応による発生熱である.原子核はともに正の電荷を持っているため,互いにクーロンの反発力が生ずる.このため核融合反応は起こりにくい.温度を数百万℃に上げると,原子核はクーロンの反発力に打勝つ運動エネルギーを持つようになり,核融合反応が起こりやすくなる.これを熱核融合という.ミュオン核融合はミュオンを触媒にした核融合反応である.常温核融合は,パラジウムなどの水素吸蔵金属を電極にして重水を電気分解すると生じるといわれる核融合反応である.常温核融合は従来の理論では考えられない反応であり,実験的にもその真偽はいまだ明らかにされていない.