ディーゼル機関は自動車をはじめ,船舶,発電,建設機械用の原動機として使われている.自動車用は吸入,圧縮,膨張,排気を2回転四行程で行う四サイクル式が主流である.舶用では大型低速機関(ボア径φ500~φ1000)が1回転二行程で行う二サイクル式が,中型中速(φ200~φ500)では四サイクル式が主流である.発電,建機は四サイクル式が多い.本機関は圧縮点火機関またはCIエンジンとも呼ばれ,エアクリーナ,吸気マニホルドと吸気弁より空気だけをシリンダ内に吸入し,ピストンで空気を高温高圧に圧縮し,噴射ポンプで加圧した軽油燃料を上死点前後で噴射ノズルから燃焼室に噴射し燃焼させる方式である.噴射された燃料は空気と混合し蒸発して,ある遅れ後に自己着火する.この着火遅れ期間中に形成された予混合気が急速に燃焼する予混合燃焼に続いて,拡散と混合が律速する拡散燃焼が生じる.直接噴射式では燃焼室はピストンに設置され多噴孔型噴射ノズルと組合されて,副室式では副室がシリンダヘッドに,主室はピストンに設置され,スロットル型噴射ノズルと組合されているのが一般的である.副室式には,乗用車用におもに使われるボア径φ100以下の渦流室式と,熱負荷,燃費などで直接噴射式に替わられたが,バス・トラック用に使われた予燃焼室式とに分類される.副室式では副室からの燃焼ガスの噴出遅れが燃費悪化の原因であるが,濃混合気燃焼のためにNOxは低い.一方,直接噴射式は逆にNOxは高いが,噴射時期遅延などで予混合燃焼量と燃焼温度を下げると,NOxが減少する.
燃焼中は燃焼ガスが高温のため,低温部のシリンダライナやピストン,シリンダヘッド下面から熱が逃げるが,ライナのまわりには水ジャケットがあり,冷却水がライナを冷却し,温度分布を均一にしてシリンダの変形を防止している.熱損失を低減してシリンダ圧力を高くすることが熱効率の改善になるが,この実現の一方法が断熱または遮熱エンジンである.断熱や遮熱の方法としてセラミックスまたは鋳鉄ピストンなどが使われている.燃焼で発生した圧力はピストン,コネクティングロッドを介してクランク軸の回転運動に換えられる.一般にはクランク軸にはエンジンの不釣合い力または偶力を釣合せるためのおもりであるバランサが設けられ,後端にはクランク軸の回転運動を吸収,放出し回転変動を小さくするフライホイールが設けられている.
燃焼ガスは排気弁,排気マニホルドを通って大気に排出される.排気ガス温度は高いので,この熱エネルギーを回収する目的で,排気タービン過給器に排気ガスを導いて吸入空気量の増大を図っているのが過給エンジンである.
副室式エンジンではエンジン始動時にグロープラグに電流を流して副室内の空気を予熱して噴射燃料の着火を助けている例が一般的である.