流動性や構造あるいは物性など,ある性質に注目して物質を考える場合に,明確な境界により区別され,その中では注目する性質について均質とみなせる領域を相と呼ぶ.例えば物質を流動性に注目して考えると,一般に気相,液相,固相が存在する.また物質を結晶構造に注目して考えると,固体でもさらにいくつかの相に分かれる場合がある.物質がある相から他の相に変化することを,一般に相変化あるいは相転移と呼ぶ.相変化には,化学ポテンシャルの一次導関数(エントロピーや密度)の値の飛びと準安定状態とを伴う一次相変化,一次導関数の値は等しいが二次導関数(比熱など)の値の飛びを伴う二次相変化などがある.一次相変化では潜熱が存在し,クラペイロン・クラウジウスの式が成立する.液相から気相への相変化である蒸発とその逆の凝縮,固相から液相への相変化である融解とその逆の凝固,気相と固相との間の相変化である昇華は,一次相変化の代表例である.また,液体内部で気泡生成などを伴って蒸発が起こることを特に沸騰と呼び,水あるいは水溶液が凝固することを特に凍結と呼ぶ.一方,常電導と超電導との間の相変化は二次相変化の例である.