過去における物(原材料・機械道具・製品)・エネルギー・情報の生産と利用の実態を研究する,歴史学の一分野である.内容的に科学史と密接な関係にあるが,過去にさかのぼるほど技術の科学の応用という性格はなくなり,また技術史は社会における活用を問題とするところから,独立した学問分野となっている.機械・電気・化学・土木・建築などの分野ごとに,発明・革新(イノベーション)・普及移転の過程を明らかにする部門技術史が基本となるが,各部門の技術変化の関係あるいは,各時代の社会の物質文明の体系を示す総合的な技術史の研究もまた可能である.対象の地域により西洋技術史・中国技術史・日本技術史などに専門化している.技術史のよるべき史料としては,発明家や技術者自身の記録・特許・同時代の官庁企業文書や新聞雑誌記事などの,通常の歴史の場合と同じ文書資料のほかに,古い機械・製品や工場跡などの実物資料あるいは図面・映像などを含む,産業記念物が重要な史料となり,大学とならんで博物館が研究のセンタとなっている.学問としての技術史は20世紀初頭にはじまったが,現在はイギリス・アメリカ・ドイツ・日本などにそれぞれ専門の学会があって機関誌を発行しており,国際的な連絡組織としてICOHTECHがある.