社団法人日本機械学会

小惑星探査機「はやぶさ」の帰還から見る、これからの日本の科学技術

宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 教授

久保田 孝

昨年話題となった、小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトの初期計画段階から関わり、今回の帰還までを見届けた宇宙航空研究開発機構の久保田孝さんにお越しいただいた。電気系の博士課程を修了後、メーカーの研究所に勤務して時に宇宙科学研究所の中谷教授に誘われ、宇宙科学研究所に入所された。専門は、宇宙ロボティクス、画像認識、自律システム、探査機の航法誘導で、本会のロボティクス・メカトロニクス部門でも活躍。


専門、宇宙ロボティクス、画像認識、自律システム、探査機の航法誘導。1991年東京大学大学院工学研究系博士課程修了。 工学博士。1991年~1993年 富士通研究所にて画像認識の研究に従事。1993年文部科学省 宇宙科学研究所に入所、1997年~1998年NASAジェット推進研究所客員科学者。
現在、JAXA宇宙科学研究所 宇宙探査工学研究系 教授。月・惑星探査プログラムグループ特有バス機器グループ長。東京大学大学院工学系研究科 教授 併任。
聞き手 鈴木真二第88期広報理事(東大)、金子暁子第88期広報・情報部会委員(筑波大)

自己紹介

自己紹介をお願いいたします。

【久保田】 専攻は電気系工学です。修士、博士は東京大学の六本木にあった生産技術研究所におりました。電気系ですが、主に研究していたのは制御やロボットで、私はロボティクス、知能ロボットの研究をしておりました。博士号を取ってからは、世の中で役に立つことがしたく、富士通研究所で画像認識の研究をしておりました。

  富士通研究所におりましたとき、宇宙科学研究所の中谷教授に、これから惑星探査の研究開発をしていくのでぜひ宇宙研に来てもらえないかというお誘いを受けました。衛星や探査機は、宇宙という手の届かないところにあり、通信による時間の遅れもあるなかで自分で考えて行動するまさしくロボットなのですよね。自分が研究してきたことが実際に応用できる場面があるというのを聞いて興味を持ち、勤めていた富士通研究所にお話しをし、大学関係ならということで円満に退職させていただきました。宇宙科学研究所に勤める経緯は、月・惑星探査の自律化や知能化という分野で活躍してほしいという誘いを受けて移ったということになります。

 また、月・惑星探査プログラムグループ特有バス機器グループ長も併任しています。このグループでは、これがなくては動かないという要の電源や通信やコンピュータ等の機器つまりバス機器を担当しています。

宇宙に関係する技術者を目指されたいきさつを教えてください。


【久保田】  宇宙は小さいころから興味は持っていて、星を見るのも好きでした。小さいころ夜中に親に起こされて、すい星が来たときの天体ショーを見て感動したというのを覚えています。宇宙については非常に興味を持っていましたね。でも、当時アニメがはやっていて、テレビっ子世代でした。「鉄腕アトム」などを見て育ちましたので、少年時代は宇宙よりもどちらかというとロボットやコンピュータに興味を持っていました。

  1980年後半から90年ぐらいの私が大学を卒業するころは、当時第5世代コンピュータや人工知能の研究が盛んになったころです。それに触発されて、人工知能の研究をしようということで大学院に進みました。自分はどうして考えているのか、どうやって記憶しているのか、物を持つことは人間は簡単にできるけれども機械にやらせると結構難しく、どうしたら実現できるかというような知能ロボットの研究を修士・博士課程では行っていました。
 大学院の研究では宇宙ということとは少し離れていたのですが、先ほどお話ししたように富士通研究所にいたときに、宇宙科学研究所の先生から宇宙でぜひ専門を活かしてくれないかというお誘いがありました。実際見てみると、まさしく自分がやってきた研究を活かせる場があったと実感し,宇宙のほうの研究をするようになりました。
 


<<前のページ

| △トップページ |