- このイベントは終了しました。
No.10-51講習会「食品製造設備の安全設計による競争力強化の課題」
2010年6月18日 09:30 - 17:00
開催報告
1.「食品メーカーから見た食品製造設備の衛生安全とその課題」
山崎製パン株式会社 鷲巣恵一 氏
製パン業界は粉が舞う環境であり、ライン停止は品質に直接影響する。労働災害は、トラブル、清掃、調整の時に発生しやすい。
設備保全に力を入れて来た結果、トラブルが半減した。機械メーカーには残留リスクを明明確に言って貰いたい。
残留リスクは許容できるレベルまで下げなければならないが、そのレベルは時代と共に変化している。
食品機械は食品衛生のリスクアセスメントが重要である。だが現実には機械安全と衛生安全の両立が難しく、過剰な安全装置は作業性
の低下やライン停止による品質低下を招き兼ねない。
製パン機械の中には永年使われている古い設備も少なくない。PLの観点から言えば、食品機械は売った後が商売である。
設備のライフサイクルを考えてほしい事と、古い機械であっても安全性の上での改善を考えて欲しいと思う。
2.[機械メーカーから見た食品製造設備の衛生安全性の考え方」
岩井機械工業株式会社 森江康雄氏
法体系で言えば食品衛生は憲法第25条に基づいて食品衛生法が作られ、乳等省令などが出されている。国際的な基準としてコーデックスがあり、
サニタリ設備の基準として米国の3A、欧州のEHEDGがある。 サニタリ設備には金属、ゴム、プラスチックが材料として用いられているが、生産時のみではなく、洗浄時の酸・アルカリなどの薬剤耐性も考慮して
選ばなければならない。中でも材質に影響を与えやすいのは塩素である。特にパッキンに用いられるゴム材では、殺菌剤脱臭剤として用いられる次亜
による劣化がある。また着香強度はパッキン材料の特性に影響されるので材料特性を考慮して選定することが必要である。寿命1年のパッキンなら
2,3年の耐久試験も必要である。 サニタリ設備は、洗浄・殺菌性が良い事が求められる。熱交換器を例にしても焦げつきにくく洗浄しやすい形状へと改善され、近年はプレート式から
チューブ式へと移行している。またCIPに関しては、エネルギ-コストの低減も必要であり、この点からの改善も進めている。
3.「食品機械の安全性確保に向けた取扱説明書と表示のあり方」
日本食品機械工業会 大村宏之氏
食品機械は機械安全と衛生安全の2つの安全性が求められる。その設計に当っては、RBA(Risk Based Approach)の手法、すなわち機械の制限、危険源の
同定、リスクの評価を行い、残留リスクが許容可能なレベルまで低減しなければならない。残留リスクの低減活動に際しては、必要であればその機械の
利用者、用途などの機械の制限も見直す必要がある。
機械に添付されている取扱説明書には、その機械の利用に際しての注意事項が記載されている。ここに記載される内容は、設計時のRBAの結果である
残った残留リスクとリンクしなければならない。すなわち、その残留リスクのレベルに応じて、危険、警告、注意として記載する事が必要である。
また機械設備に貼るラベルに記載するシグナルワードも、取扱説明書とリンクしたものでなければならない。
4.「食品工場における食品防衛はいかに考えるべきか」
元味の素エンジニアリング株式会社 佐田守弘氏
食品メーカーでは食の安全性を補償する仕組みとしてHACCP、トレーサビリティなどを導入して来た。だがこれらの仕組みは性善説によって補償
されている仕組みである。冷凍餃子事件は食の安全を根本から覆す事件であった。この様な悪意による食品テロは、従来の食品安全ではなく食品防衛
として考えなければならない。
米国のバイオテロ防止法をそのまま日本に持ち込むのは難しい。日本には日本なりの食品防衛のあり方を考えなければならない。
破壊行為の多くは怨恨による事が多い。社内外からの怨恨を生じない施策、有害物を混入されない体制など、金を掛けずにできる事は多数ある。
そして防衛対策を講じている事を示す事も大切である。 だが組織的なテロを完全に防ぐ事は難しい。食品防衛もRBAに基づいてどこから実施するかを考える事が重要である。