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第27回トワイライトセミナー 爆発影響評価のための爆轟現象のモデル化
2012年9月3日 18:30 - 20:00
(独)産業技術総合研究所 安全科学研究部門 爆発利用・産業保安研究グループ
久保田 士郎 氏
高エネルギー物質の貯蔵施設等で爆発事故が発生すると周辺に多大な損害を及ぼすため、十分な安全対策が要求されている。 爆発とそれに伴う複雑現象を理解し、それらが周辺にどのような影響を及ぼすか評価しなければならない。 特に爆轟と呼ばれる衝撃波を伴う化学的爆発が生じた場合の被害は大きく、重要な評価項目である。 流体力学に基づくコンピュターシミュレーションは一つの有効な影響評価手段である。 ここでは、凝縮系高エネルギー物質の爆轟現象に着目し、シミュレーションの際に必要となる爆轟現象のモデル化について講演があった。 講演の前半は、爆轟現象への科学的理解が十分でない聴講者のために、「爆発」、「爆轟」という言葉の説明から始まり、 衝撃波についての物理学的説明、火薬類の歴史と爆轟を呈する高エネルギー物質の工学的応用についてお話があった。 その後、19世紀終わり~20世紀初めに発表された爆轟波の単純理論であるC-J 仮説から現在に至るまで提案されてきた、 様々な爆轟現象の理論とモデルの説明が体系的になされた内容であった。爆轟現象の理論体系においては爆轟を「理想爆轟」と「非理想爆轟」に大別できる。 講演の後半は、非理想爆轟の研究において、爆轟転移過程のモデル化と数値シミュレーションの方法論についてお話があった。 爆轟転移過程のモデル化の研究では、反応モデルや状態方程式のパラメータを変化させることなく、複数の衝撃起爆問題に適用できる、 より汎用的なモデルの構築が求められてきている。ここでは久保田氏自身の研究成果も紹介しつつ、 実験と数値流体力学(CFD)コードを用いたマルチスケールシミュレーションの併用による起爆モデルや状態方程式モデルの構築手法を解説する内容であった。 この講演は、爆轟現象について基礎的な知識から現象のモデル化に関する最先端の研究まで幅広く触れたものであり、聴講者からの質問も多岐にわたり、 大変盛況な講演会であった。(参加者17名)