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特別講演会「リスクの定量化技術について」
2006年8月18日
開催報告
1.「主旨」
製造業においては,自然災害による事故やトラブルの発生,ヒューマンエラーや設備の不調に起因したトラブルの発生など最大限の 配慮をしても安定的製造活動を阻害する要因により,安定供給の使命が果たせない事象が発生します。企業活動においては如何にして 阻害要因を抽出し制御していくかをリスク管理という手法で実施されるようになってきました。最近,さまざまなリスクについての 定量化技術が進んできており,今回は,企業活動に役立つリスクマネジメントの技術紹介を企画しました。
2.「コンサルティングにおける様々なリスク定量化」
株式会社 損保ジャパン・リスクマネジメント 泉 太一郎氏
リスク評価をするためのリスク定量化手法の紹介の後、事例紹介を通じて具体的なリスク評価の手法を分かりやすく説明された。 事例紹介1:石油精製プラントにおける地震リスク評価、イベントツリー作成から損失期待値の推定、リスクカーブの作成、対策に よるリスク軽減の考え方などについて紹介。事例紹介2:最大損害額MPL評価、石油・化学プラントで発生可能性のある蒸気雲爆発 のシナリオについて紹介。最後に事業継続マネジメント(リスクマネンジメント)についても紹介された。
3.「リスク曲線による施設の損傷リスク評価と保守管理」
横浜国立大学安心・安全の科学研究教育センター センター長・教授 関根和喜氏
リスクの定量化を指向した新しい災害統計分析手法の紹介。事故の定義からはじめ、過去の事故発生データを分類整理し、 一定以上の規模の被害発生の場合、被害の大きさと上側累積頻度に直線性があり、安全指数の考え方を導入した。ハインリッヒの法則 にもあるように、大きな事故の背景には、小さな事故がもっと多く存在し、その背景には事故に至らない規模の多数のトラブルが発生 している。これらからは、フェールセーフ的安全理管理論が重要な考え方となる。タンクの底板裏面腐食のリスク曲線の紹介とタンク 開放検査に代わるAE法による腐食損傷診断法の紹介。災害リスクマネジメントの立場からみた施設の損傷リスク評価ならびに施設全体 としての損傷リスクを評価・診断ならびにリスクを低減するための技術を組合わせたリスクマネジメントが重要である.
4.「化学産業におけるリスクマネジメント」
横浜国立大学大学院 環境情報研究院人工環境と情報部門教授 大谷英雄氏
石油・化学工場における事故統計分析の紹介。高圧ガス設備、危険物施設の事故とも減少傾向にあったものが、近年増加傾向に 転じている。結論は出せないが、従業員数減少と事故数増加傾向には相関がある。また、最近リスクマネジメントを企業が実施 しているが、モラルハザードのある社会ではリスク管理は不可に近いことも知っておく必要がある。具体的な事故事例2例の紹介 の後、定量的リスクマネンジメントによる安全管理の考え方を社会的受容リスクの考え方から紹介。