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健康を支える食品と安全~安全・安心な食品をつくる機械とシステム~
2003年3月15日
開催報告
1.「開催挨拶・基調講演」
東京工業大学教授,当部門長 鈴木正昭 氏
日本機械学会活動の概要説明の後,科学技術者は科学的に安全なものを提供する土壌を築き上げているが,食の安心に対する市民の思いと 科学技術者のそれとの間にギャップが感じられ,技術者にはそのギャップを埋める努力と市民に本当のことを判りやすく説明する使命が あり,本フォーラムをその一端としたい旨,開催主旨を述べられた。 基調講演では,安全関連理解のための必須事項として,食中毒や化学物質による疾病を例にハザード(被害をもたらす潜在性を持つ状況) とリスク(ハザードによってもたらされた被害の大きさと発生の頻度を掛けた状況)の意味,科学技術はリスクと便益のバランスを考慮 して使用すること,安全は危険か絶対安全か白黒を付けるのではなく,中間のグレイゾーンを認識することを強調された。 次いで,生産から物流までの食品関連技術を概観し,残留農薬問題,安全な食品照射事例について解説した。食品の安全は,どんなものでも 安全と証明されねば安全とはいえないという考え方に,また,事故の後追ではなく,先に予防処置を講ずる考え方に変わってきていることを述べ, 事業者や自治体がリスクアセスメント,リスクマネージメントを進める中で,市民が参加し一緒にリスクを評価し共有する リスクコミュニケーションの時代に変わってきていることを話された。 さらに,倫理感をもち、国は国民をパートナーであるという意識を持ち,生産者・産業は安全なものをを提供し,きちんと情報公開し, 説明責任を持つ,科学者・技術者は安全性の研究・教育に貢献し、市民へのわかりやすい説明に努め,マスコミには正確な報道を していただくこと,市民は知識・経験を蓄積し勉強していただき,国,産業界に有効な意見や情報の提供をきちんとしていただき, コミュニケーションを取りながら一緒に安心な食べものを得る努力が必要と結ばれた。
2.「食品の鮮度保持と賞味期限について」
財団法人日本冷凍食品検査協会検査事業本部部長 新宮和裕氏
食品の鮮度が落ち変質する原因(微生物による腐敗,酵素活性による変質,酸化による変質,再凍結による変質)について, それらの対策事例を紹介した。細菌(微生物)増殖のメカニズム(食品に初めから入っている菌数別時系列変化,保存温度別菌数の 時系列変化の図表)をパターン化し保存期間の考え方を解説した。次いで,消費期限(衛生面でも品質でも食べて大丈夫である, 安心して美味しく食べられる期間)と賞味期限(衛生面では問題ないが,期限を過ぎると食べるのにむかない)について事例を挙げる とともに関連法について解説された。
3.「安心して食べられる美味しい食品を家庭に届けるまで」
東京農工大学教授 部門運営委員工藤信之 氏
はじめに安心の逆の不安要因として,輸入野菜の残留農薬,BSE,農薬使用,偽装表示等をアンケート結果を使い挙げられた。 生産から市民の手元までの各段階別の問題点について具体例を紹介された。生産段階での事例として,輸入リンゴのカビ防腐剤塗布, 国産リンゴへの無登録発ガン性農薬使用,オレンジ栽培での除草剤使用・ポストハーベスト剤塗布(輸出時に腐らぬよう薬剤使用)など, 物流段階ではつくる側の機械・プロセスの安全は確保されているが,倫理が問題と指摘された。食品の量的確保のための農薬・殺虫剤使用, 遺伝子組替食品(対減農薬)の現状と関連問題の説明がなされた。また,専門のダイオキシンについて解説された。(ダイオキシン濃度は 徐々に減っていること。脂肪分の多い魚に蓄積されやすいこと。ベビーフォードが一番安全であることなど。)リサイクル問題は時間の 都合上割愛された。
4.「ポスターセッション/とクイズ・アンケート」
セッションは休憩時間を兼ねると共に,市民と部門関係者との交流の中で,前半の講演に関する質疑・所感や後半のセッションヘの 要望を伺い,情報交換に運営委員全員が対応した ポスターセッションはテーマを3題(賞味期限,食品添加物,食品のカロリーについて)とし,クイズ回答のヒントを含んだものを選定した。 また,アンケートは,市民フォーラム開催を何で知ったかと,どのようなフォーラム開催を望んでいるかの2項目について何った。 アンケートの結果,市民の関心が高いテーマは,①健康と医療,②食の安全関係(食物とアレルギー,健康,食生活等),③安全でした。 クイズは,全問正解者が予想より低く次回の出題を見直すこととなった パネルセッション(司会:鈴木正昭氏(前出),パネラー:新宮和裕氏(前出),工藤信之氏(前出),岡本玲子氏(西東京薬剤師会会長),佐田守弘氏(部門運営委員)): 議論は農薬問題と倫理について主に行われた。 前者では,人口問題を考え,リスクとの折合いを考えねばならぬことを認識し,その中で輸入野菜の農薬汚染,遺伝子組替食品が取り 上げられ,子供と妊婦は避けるよう提言があった。有機JAS(国内野菜生産量の0.1%,),減農薬野菜(農協単位で従来の農薬使用量の 50%以下であるもの),農薬管理法等の説明と,リスクの高いものから順に見直しを3ヵ年で行うこと。農薬の使い方の仕組みとルール づくりは関係者のコンセンサスとともに内容に関する情報提供が大切なこと。最近の中国農家は5人組制度,ガスクロの導入など農薬問題へ の取組みに変化か見られること。土壌殺菌農地(キュウリやジャガイモ畑にクロロピクリン使用)の休耕と転作の必要性。見てくれに とらわれぬ作物の選択が各種処理工程削減に寄与することなど。なお,有機野菜は農薬・化学肥料無使用を意味していることではなく, 農業の中で必要なものは使って良いと有機JAS法では認められていることが補足説明された。 一方,後者では,工学倫理教育の事例紹介と技術的に変だと思ったことは変だということなど実社会にあった教育の必要性。国民生活審議会 の企業行動基準や内部告発制度の法制化の動きに見られるように消費者側にレッドカードを企業に出す権利を持っていること。いくら システムを作ってもデータを入れる人に倫理がなければ役立たぬこと。経営者は倫理を持った人がなるべきで,なってから倫理教育を受ける 人は問題など,信頼できる環境づくりの大切さが話し合われた。