今までに流体工学部門のニューズレター「流れ」に掲載された記事を集め, 最新情報を付け加えて1冊の本にまとめたものです.
身近な流れから,宇宙空間での流れまで,さまざまな流れを 専門家がわかりやすく解説しました.写真も豊富で,誰にでも気軽に読める小冊子です.
是非,ご購読ください.
1997年9月10日 1版1刷発行
ISBN 4-7655-3249-6 C0040
B6判 228頁 口絵(カラー)4頁
定価:本体2,300円+税
著者:(社)日本機械学会
発行所:技報堂出版株式会社
<はじめに>
この小冊子”流れの科学”は,(社)日本機械学会・流体工学部門のニューズレターに掲載されたトピックス記事を中心に再構成したものである.自然界にはいろいろな流れがある.大気の流れ,河川の流れ,海岸に打ち寄せる波.これらをじっと観察していると,その動きの中に何か夢があり,その動きは人の心を和らげてくれる優しさがある.一方,台風や洪水,地震による津波は我々に大きな被害をもたらし,自然の脅威と恐ろしさを感じさせる.巨大なビルや橋は強風にさらされ,高速で飛行するロケットや超高速で走るリニアモーターカーはその空力特性の解明が重要である.身のまわりにおいてもゴルフボールの飛翔,水泳と水着の抵抗,野球のボールのカーブなど,スポーツと流体力学は大きなかかわりを持っている.
我々は日常生活においても流れと縁を切ることはできない.また,工学的な物づくりにおいてもあらゆるところで流れはかかわりを持ち,我々に喜びと苦しみを与える.この小冊子では各分野の専門家の方々が,誰にでも流れに興味をもって楽しく気軽に読める読物として,いろいろな角度からのトピックス記事がまとめられている.読者は電車の中で,または公園の片隅で,ちょっとした休憩時間に,この本を読んで,流れに親しみその感動を著者と共有していただければ幸いである.
「流れの科学」編集委員長 棚橋隆彦(慶應義塾大学理工学部)
<目次>
1 風が吹くと?
1-1 竜巻 −大気中で最も強い風を吹かせる渦− (新野 宏)
1-2 砂丘・砂漠のエコロジー (神近 牧男)
1-3 本州四国連絡橋と風 (宮田 利雄)
1-4 ビル風の予測とその可視化 (村上 周三)
2 環境保全と防災
2-1 環境・流れ・音 (藤田 肇)
2-2 環境にやさしい流体機械 (清水 幸丸)
2-3 環境と流動層工学 (堀尾 正靱)
2-4 湾岸油井火災に伴う大気汚染と気候変動 (植田 洋匡)
2-5 津波防災に向けて (今村 文彦)
2-6 「もんじゅ」の事故を真の教訓に (亀本 喬司)
3 宇宙への挑戦
3-1 H-?ロケットの開発 (宮澤 政文)
3-2 航空宇宙機器の設計とCFD (野本 秀喜)
3-3 重力を及ぼす球を過ぎる流れ −降着流− (松田 卓也)
3-4 木星に衝突する彗星 −ガリレオ探査機との対比− (白井 紘行)
4 乗物と流れ
4-1 自動車の空気抵抗低減とCFD (中川 政夫)
4-2 運転者周りの流れを可視化する (小森谷 徹)
4-3 リニアモーターカーの空力問題 (小田 和裕)
4-4 ジェットフォイルの姿勢制御と流体力 (斉藤 泰夫)
5 スポーツの進化と流れ
5-1 水泳・水着と流体力学 (野村 武男)
5-2 ゴルフボールと流体力学 (青木 克巳)
5-3 低空気抵抗ゴルフクラブ (永井 正夫)
5-4 陸上競技と風 (植屋 清見)
6 生物に学ぶ
6-1 バイオテクノロジーと流体工学 (谷下 一夫)
6-2 生物流体力学の新しいパラダイム (谷下 一夫)
6-3 生物を工学の目で見る (東 昭)
7 流れの不思議を科学する
7-1 乱流とカオス (中村 育雄)
7-2 乱流の数理モデル (大宮司 久明)
7-3 知的乱流制御 −21世紀への夢− (笠木 伸英)
7-4 極低温における超流動ヘリウム (坪田 誠)
8 流れを調べる
8-1 航技研大型低速風洞の歩みと将来 (石田 洋治)
8-2 船舶技研多目的風水洞の建設 (青木 修一)
8-3 乱流風洞の開発研究 (西 亮)