2011年度の環境工学部門、部門長を務めることとなりました。実は私は大学で機械工学を修めたものではなく、土木工学系の衛生工学(上下水道・廃棄物他環境部門)の出身です。卒業後も主に、土木学会、日本水環境学会、日本水道協会、日本下水道協会などといった学協会に軸足をおき、浄水処理や下排水処理、特に、最近世界水ビジネスで注目を浴びるようになっている、膜技術を利用した水処理技術を中心に研究をしてまいりました。15年程前に、第三技術部門のコーディネーターを依頼されたのが縁で、環境工学部門の活動を始めるようになりましたが、機械工学とは縁がなかった者を温かく迎えていただいた本部門関係者に、まずお礼を申し上げたいと思います。
環境工学部門は他の部門と違って、研究対象や学問分野でまとまっているのではなく、環境工学、すなわち、地球レベルから、地域レベル、オフィス・家庭レベルまでの様々なスケールにおける自然環境、生活環境を保全し、より住みよい社会の実現を目指すという目的を共有する機械工学者が集まる部門です。従って、他の部門を主部門としている方や、あるいは、私のように他の学協会をメインとしている方も多いというのが特徴と思います。これは、環境工学の性質を考えれば当然のことで、環境を良くするという目的の前に、機械工学も電気工学も無いからです。
私の専門分野である水環境や上下水道の世界のことを少しお話しますと、例えば、私自身が研究テーマとしている膜利用型水処理も、大学で専門としている研究者の方々は、化学工学や土木工学に所属しているケースがほとんどですが、流体工学など、その基礎となっている学問の多くは機械工学であることに気がつきます。水処理システム、配水管など水輸送システムなど多くの分野の基礎は機械工学であり、また民間企業の上下水道関係エンジニアの多くは機械工学科出身であることが多いのですが、日本機械学会における活動や全国の機械工学系大学教員の活動として、水環境分野に関わるものが少ないようで、やや残念に思います。日本に限らず世界で水問題が注目を集めている中、多くの機械工学エンジニアに水環境改善の問題に取り組んでいただとともに、学会にはこの分野での先導的な役割を果たして欲しいと常日頃願っております。
本部門は、「騒音・振動評価・改善技術分野」、「資源環境・廃棄物処理技術分野」、「大気・水環境保全技術分野」、「環境保全型エネルギー技術分野」の4つの分野から成り立っていますが、これら4部門は個々に独立しているのではなく、相互に連携しながら、都市環境の改善と環境負荷の低減を目的に研究・開発に励むエンジニア集団です。機械工学はこれらの分野の基礎的学問であり、これらの問題の解決には、機械工学エンジニアの活躍が欠かせません。また、このような都市環境に関わる4つの部門を一つにまとめて活動範囲としている組織は、大変ユニークであり、他の各協会にはないものでしょう。数年前から始まった「先進サステナブル都市」は部門横断的な活動ですが、本部門の共通の活動目標として相応しいものであり、ぜひその活動を通して、部門の活性化に結び付けたいと考えています。
また、繰り返しですが、環境工学に取り組んでいる分野は、他の分野にも多くあります。例えば、毎年開催されている「環境工学連合講演会」は日本機械学会、日本化学会、土木学会、日本建築学会はじめ20の学協会の共催です。これからはこのような学協会横断的な活動も必要になって来るでしょう。その中でも日本機械学会が主導的な役割を担い、環境工学の発展に寄与することが大いに期待されています。環境工学部門の活動をより活性化させることで、学会の他部門のエンジニアにも環境工学への関心をより高めていただけるものと信じています。
今年は例年通り、6月30日-7月1日に環境工学総合シンポジウムを実施しますが、単なる研究発表会ではなく、多くの会員が将来の環境工学の目指すところについて多いに語り合い情報交換をする場にしたいと考えています。皆様のご協力とご支援をお願いいたします。