行事一覧2005第15回 環境工学総合シンポジウム 見学会報告書

第15回環境工学総合シンポジウム 見学会報告書

大阪市立大学大学院
西村 伸也

日時

平成17年7月9日(土)

見学先

1.(株)日本製鋼所室蘭製鋼所→2.道立栽培水産試験場→3.祝津風力発電所→4.西胆振地区廃棄物広域処理施設→(昼食:ダンパラ市民公園ロッジ)→5.新日本製鐵(株)室蘭製鐵所

参加人員

31名


 7月7,8日に室蘭工業大学で開催されたシンポジウムも盛会裏に終了した9日土曜日に見学会が行われた.特に、シンポジウム現地実行委員長の室蘭工業大学岸浪先生のご尽力で,上記のようにほぼ1日を費やす見学プログラムとなった.
 講演会が初の地方開催,それも風光明媚な北海道ということで,見学会参加者も例年より多かった.また,学会期間中の宿泊先として温泉で有名な登別温泉のホテルを御手配いただいたこともあり,参加者の半数以上が同温泉より見学会用の貸し切りバスに乗車した.その後,室蘭工業大学正門前,ホテルサンルート前に立ち寄って,一路,第一番目の見学先である日本製鋼所の室蘭製鋼所に向かった.車中では,バスガイドさんが,日頃の観光ガイドとは違い,専門技術用語を用いた案内に緊張していたためか,言葉を詰まらせながらも,北海道人らしい朗らかさで案内を務めてくれ,参加者一同くつろいだ気分に浸ることができた.

1.日本製鋼所室蘭製鋼所

 日本製鋼所では水素エネルギー開発センター長の小野様と新エネ・環境部長の唐牛様がご案内くださった.を務められた.室蘭工場は1907年に兵器の国産化を目的として設立されたこともあり,現在でも,発電用や製鋼用などの大型鉄鋼製品を主とした素形材の加工を得意にしているとのことであった.そこでまず,世界最大規模の14,000トン大型鍛造プレスを見学した.直径が約3m,重量が約350トンの赤熱された鋼塊が鍛造される様は壮観であった.
 ついで,上記の円柱状に加工された鋼塊が,発電用のローター軸や,圧延ロール,原子炉容器などに加工される,加工工場を見学した.現在の経済状況を反映して,製品の6割以上が中国向けの輸出品とのことであった.また,原子力発電用の圧力容器に関しては世界のマーケットシェアの約80%を占めているとのことであった.
 その後,水素エネルギーセンターを訪れ,造塊技術の高度化の歴史や,水素吸蔵合金の開発,ならびに北海道という地域性を生かしたバイオガスプラントの開発など,同社の多様な取り組みについての紹介を受けた.
 最後に,質疑応答を行い,現在同社が進めている大型風力発電事業について概要説明を受けた.見学会の主な目的の一つが,羽根の翼長が40mにも達する2,000 kW級風車の製造ライン見学であったが,ラインを建設中とのことで,今回は見学できなかった.なお,同社では,特殊設備が多いことから,写真撮影は行えなかった.
以上のように,通常は見学できないような大型製造設備や特殊用途工業製品について見学できた.紙面を借りて同社ならびに見学会説明に携われた関係各氏に感謝いたします.

2.道立栽培水産試験場

 日本製鋼所より海岸沿いのドライブを楽しみながら,追直海岸に建設中の道立栽培水産試験場に向かった.あいにく当日が休館日とのことで,試験場施設の建築関係者に試験場設備の概要について説明を受けた.同センターは,スケトウダラ,ケガニ,カレイ類,シシャモなど北海道周辺でとれる魚介類の資源管理(種苗放流)や資源の増殖・漁場保全技術の開発に関する試験研究を実施するとのことで,かなり大きな施設であった.

写真:道立栽培水産試験場施設説明図 写真:説明風景(手前左端;伊藤部門長)
道立栽培水産試験場施設説明図  説明風景(手前左端;伊藤部門長)

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3.祝津風力発電所

 ついで,白鳥大橋を通り,祝津にある風力発電所を見学した.同発電所にはいずれも三菱重工業製の500kWならびに1,000kWの風力発電機が設置されていた.当日はそれぞれ230kWならびに450〜600kWの発電が行われており,岸浪先生によると7月としては上々の発電量とのことであった.この施設は通商産業省の「環境調和型エネルギー供給施設整備事業」により建設されたそうで,発電された電力は,同施設に隣接した白鳥大橋記念館の照明や白鳥大橋の夜間ライトアップに主に利用され,余った場合には,北海道電力を通じて一般家庭に供給されるそうである. 写真:祝津風力発電所(風車)

 

4.西胆振地区廃棄物広域処理施設

 正午をかなり過ぎていたが、昼食前の最後の見学地として西胆振地区廃棄物広域処理施設を訪問した.同施設ではキルン式の熱分解燃焼溶融炉を用いてゴミ処理を行っており,処理能力は210 t/dayであり,発電出力は1980 kWとのことであった.施設は平成15年4月に完成したばかりとのことで,設備もきれいで,また,見学コースもよく整備されていた.また,寒冷地のせいか,通路やトイレに多くのスチームヒータが設置されており,廃熱の利用もよく考えられていると感じた.

昼 食

 盛りだくさんの午前中の見学会も無事終了し,約20分のドライブの後,ダンパラ市民公園ロッジで昼食をとった.メニューに焼き鳥が含まれていたが,室蘭では焼き鳥といえば豚肉とのことで,見学会参加者もこの名物料理を楽しんだ.また,同公園は,都会の住民には信じられないが,スキーもできる高原にある市民公園であり,見学会の記念にと記念撮影を行った.写真の左から二人目がバスガイドさんで,最初にも紹介したように,講演会(+夜の懇親会?)で疲れていた見学会参加者の気分を和ませる名人であった.

参加者集合写真
見学会参加者集合写真(ダンパラ市民公園)

5.新日本製鐵室蘭製鐵所

 昼食で満腹になったせいか無言になったメンバーを乗せて,バスは一路室蘭市の中心部にある新日鐵室蘭工場に向かった.まず,市民会館において同工場の越野様から工場の概要説明を受けた後,高炉ならびに廃プラスチックのコークス化プラントの見学を行った.
 高炉は高さが39mで内容積が2900m3であり,平成13年に火入れし平成33年までの20年間連続操業予定とのことであった.また,高炉は規模が大きいにも関わらず,操作は1班8名の3交代で行われているそうである.このような説明からも,運転の高度化の必要性や国際競争の厳しさの一端を垣間見た気がした.
 ついで,環境工学部門の見学会ということもあってか,廃プラスチックのリサイクルの一例として廃プラスチックのコークス化プラントを見学した.広大な製鉄所のせいか移動だけでもバスで5分以上かかった.操業開始当初の平成12年頃には原材料の手配に苦労し,北海道だけではなく,東日本一円から原料を収集したそうである.しかしながら近年では,自治体等のゴミの分別収集も進み,北海道内からの調達で済みようになったそうである.また,処理費も1トン当たり12万円(平成12年)であったものが8万円(平成17年)まで低減できたとの説明を受けた.

あとがき

 今回の見学会は,シンポジウムの現地実行委員長である室蘭工業大学岸浪鉱機先生のご尽力により,自然エネルギー利用や廃棄物処理とその資源有効利用など,本環境工学部門に関連する諸施設を見学することができた.参加者を代表して,紙面をお借りし,改めてお礼を申し上げます.

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